3-28【本気のクラウソラス2】



◇本気のクラウソラス2◇


 コイツ!!まっっったくやる気が感じられない!

 私が何のために、コイツに剣を向けてると思ってるのよっ!


 ミオが二年前に受けた痛み……それは絶対に味合わせる。

 でも、それだけじゃない……今回この事を一番気にしているのは……ミーティアだ。

 あの子は始め、この男をやとうことを反対したらしい。

 ミオに悪いと……でも、ジルに何度も頭を下げられて……承諾しょうだくしたと言っていた。


 ミオは家族を大切にする男。

 だからミーティアは、ジルの兄であるこの男を否定する事が出来ないんだ。

 ジルが大切にする家族、だからミーティアは受け入れる。

 自分の不利になる可能性がある男を、受け入れたのよ。


「――はぁぁぁぁぁっ!!」


 目の前には、魔法の壁。

 確か――【魔障壁マ・プロテク】。

 【クラウソラス】の刃を防ぐことの出来る、魔法。


 だけど、私だってこの二年で……成長してるんだからっ!!


「そんなものでぇっ……【クラウソラス】っ!!」


 念じるのは――刃だ。


 使い分ける・・・・・事が出来れば……きっと物理でだって攻撃出来る!

 【クラウソラス】の派生能力である、【光魔法】。


 光を放出させず、そのまま圧縮あっしゅくを繰り返すイメージ……ドンドン重ねて、何層も何層も重ねれば……けんは――形になるっ!!


「――くっ……なに!!」


「【クラウソラス】っ!!――【結晶剣クリスタル】!!」


 パリン――と、心の中で何かがはじけた気がした。

 その瞬間……手に、初めて【クラウソラス】の重み・・を感じた。


 ズシン――とまでは言わないけれど、それでも感じる重量に、私は力を込めて振るう。


「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 とても女の子らしくない声だった。

 でも、恥ずかしさよりも勝ったのは……喜びだった。


「――お前も……いとも簡単に先へ進むかっ!!ミオのようにっ!」


 そうか。ミオが【極光拳オーロラパンチ】なんてクソださ魔法を編み出したのは……あなたのおかげなのね。


「私は……私の道をっ!自分で選択するっ!!そして――」


 いとも簡単?そんなわけないでしょ……どれほど考えたか、どれほど悩んだか。

 今もそうよ?私は……ずっと考えてる。

 戦う事で、それから逃げようとしていたんだ……でも、この戦いで分かった。


「――私は……冒険者・・・になるっ!!」


「……っ!!」


 斬る!!そのクールな顔を、苦痛にゆがませてやるからっ!!

 だけど……外野から響いた誰かさんの声が、一瞬で空気を変貌へんぼうさせたんだ。


「――戦え!ジェイルっ!!」


「――!!……【月光狂ルナティック】!!」


 その少年・・の言葉に、初めて……ダークエルフの青年の瞳に……光がともった気がした。

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