3-27【本気のクラウソラス1】
◇本気のクラウソラス1◇
目の前にいる少女が、俺を
俺は、彼女の家族を傷つけた。
俺が
だから、この身で受けよう……その罰を。
今の俺がこうしているのは、ジルが俺を許してくれたからだ。
あの日、俺が任務に失敗をしたと知った王女
その時点で、俺の騎士団長としての役目は終わっていたんだ。
何の形式も無く、俺は無職になった……自分の覚悟で
そんなある日、入院を続ける無職の俺の前にジルが現れた。
包帯に眼帯……俺が負わせた怪我だ。
病室に入ったジルは、開口一番にこう言った。
『クビになったそうだな。掲示板に出ていたぞ……ざまぁみろ』
返す言葉も無かった。
しかし、こうも言う。
『いい機会だ。これに
始め、意味が分からなかった。
だが、思う……ジルは、俺を救いに来たんだと。
ミオ……ミオ・スクルーズ。
俺を破った少年。家族を愛する……少年。
そうか……ジルは、
だから、俺はジルに恩を返す。
【クロスヴァーデン商会】と言う仕事も与えてもらい、ミーティアお嬢様にも許可を得て……俺は、新しい道を行く。
◇
「行くわよっ……構えなさいっ!……え、えっと」
「――ジェイルだ。それだけでいい」
「……分かった、ジェイル……構えてっ!」
俺は、どうすればいいんだろうか……目の前で、クラウ姉さんとジェイルが向き合っている。戦闘態勢だ。
初めからこうするつもりだったと知っても、やはり気がかりは……ジェイルなんだよなぁ。
「……行くわっ!【クラウソラス】!!」
姉さんは【クラウソラス】を出して、低く構える。
動き出せるようにとの動きだが、どうも獣っぽい。
言うと絶対怒るから、本人には言わないけど。
「……」
ジェイルは棒立ちだ。
いつでも行ける。これが構えなのだろう。
俺との戦いの時もそうだった。
だが、それを知らないクラウ姉さんだったらきっと。
「――構えろって言ってんでしょっ!舐めてんのっ!?」
ほらね?言うと思ったよ。
クラウ姉さんは本気でジェイルと戦うつもりなんだろう。
正々堂々と戦って……そうしないと、嫌なんだよな。
「……これが俺の構えだ」
ジェイルもさぁ……もう少し
こらこら、チラチラとジルさん見るのやめなよ。
授業参観の子供じゃないんだから。
「……あっそ!!ならいいわよっ」
クラウ姉さんが動いた。
走り込みの斬り降ろし。
肩から腹に、
「……」
ジェイルは無言のままそれを
迷ってるな……もしくは命令待ち、ジルさんからのか?
「ふざけてんのっ!?」
「ふざけてなどっ……いない」
だったら黙って戦ってやってくれ。
その方が早く終わるからさ。
「……はぁっ!!」
クラウ姉さんは
走りながら。
「くっ……」
速いな。やっぱクラウ姉さんの最大の武器は、その身軽さだ。
武器である【クラウソラス】も、当然ながら重量はない。
それに加えて、クラウ姉さんの体重そのものが軽いのからな。
重りがない……と言うとブチギレられそうだから言わないが、本当に軽いんだ。
うん。マジ子供。
二年前、ジルさんに言われた「威力が軽い」と言う言葉。
それは、物理にのみ言える事であり、精神攻撃である【クラウソラス】には意味のない事だ。
「……その、剣はっ!!」
ジェイルも気付いたようだ。
【クラウソラス】の性能……物理では防げないという事に。
「
逃げ腰……か。
そうなのか?ジェイルさんよぉ……
「ちっ……!【
ギャギャギャッッ――!!
「――その魔法っ!」
だよな。
何度か模擬戦をして、ジルさんも同じの使ってたのを覚えてるよ。
不意を突いた【
「……凄い技量だ。こんな人里離れた村で、お前やミオのような人間が育つとは……世界は広いのだなっ」
うるせっ。
「うるさいっ!ド田舎で悪かったわねっ!!」
クラウ姉さんは、
魔法の障壁も、まとめてだ。
「――そ、そこまでは言っていないぞっ」
言ってるだろ、人里離れたって……その時点でド田舎って言ってるようなもんだよ!あと、エルフだって森出身なんだろ!ブーメランだっつうの!!
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