3-23【あの時の謝罪】



◇あの時の謝罪◇


 戸惑とまどったと言われれば……戸惑とまどったな。

 だってさ……この目の前にいる褐色かっしょくのイケメンは、俺と戦った男なんだぞ?それこそ命をかけて。

 下手をすれば、殺していたかもしれないし……殺されていたかもしれないんだ。

 そんな男が、妹に怒鳴られてシュンとしている姿を目の当たりにしている俺は、どんな顔をしているのだろうか。


 もう……あれだろうな。

 居たたまれない感じ、だって実際そうだし。


「いいなジェイル、まずは謝罪だ……あの時はごめんなさいって、言うんだぞ?ほら、ミオに頭を下げるんだっ」


 子供の喧嘩けんかかよ!


「――分かった。善処ぜんしょする」


 すんのかよ!!いいのかそれで、お兄ちゃん!!

 あの時の鬼気迫る追いかけっこは何だったのっ!!


「……ミオ・スクルーズ」


「な、なんすか……」


 眼力がんりき強くて引いちゃうよ俺。


 ジェイルは俺に向き、少し寄って来て。


「すまなかった……」


 と、頭を下げた。

 いや……謝罪は分かったよ。

 ジルさんが散々アンタに言ってるのを聞いて、謝ろうとしてたんだなってのは理解した。

 でもさ、そもそもなんでこの人がここにいんの?


「いや……まぁ別に、生きてるし害はないんで……いいですけど」


「そうか、助かる」


 頭を上げて、ジェイルは安堵あんどしたように微笑ほほえむ。

 そうしてたらマジでイケメンだな、アンタ。


「でも、さっきも言ったけど説明はしてくれ。そうじゃないと、理解が追い付かねぇから」


 俺さ、何故なぜかコイツには強い口調が出ちまう……ジルさんいるのにな。

 だけど、これはまぎれもない……俺の本心、なのかもしれないな。


「ああ、承知している。馬車に乗ってくれ……道すがらにでも話そう」


「分かった……ましたよ……」


 やべ……ジルさんが滅茶苦茶こっち見てた。

 やっぱり違和感なのかな?俺の口調。





 ガタン――!


っ!!」


 いっでぇ!頭打ったじゃねぇか!気を付けてくれよジェイル!


「すまん。道が悪くてな……」


 そりゃどうもすいませんねっ!

 ド田舎なもんで、道の整備が出来てないもんでっ!


「……ミオ・スクルーズ」


「――なんすかっ!?って運転あれぇよっ!」


「それに関してはすまんと言ったぞ。それと……ミオ・スクルーズ」


「いちいちフルネームで呼ぶなよっ!もうミオでいいからっ!なにさ!?」


 もう知らん。ジルさん見てるがもういいだろ。

 ジルさんなら、変な事を言うような人じゃないだろ。多分な。


「改めて謝罪する……命令とは言え、お前を襲った事……びさせてもらう……すまなかった」


「王女様の命令って奴か?……それじゃあ聞くけど、なんで俺を狙ったんだ?」


「――分からん」


 なるほどねー。分からんまま命令を聞くなよ!

 ちゃんと命令の理由を聞いて、納得してから行動してくれ!

 たまったもんじゃないぞ、こっちがな!!


「……言っておくけど、俺は王女様を知らないっすよ?」


「だが殿下でんかは……お前を見た瞬間に言ったんだ。あの子供を連れて来い、とな」


 あの子供?そう言ったのか、王女様が?

 二年前だから……俺よりも一個下で、当時十一歳か?


「……なんだそれ」


 マジでなんなんだよあの王女様。

 それじゃあまるで、あの王女様の方が、俺よりも年上のようじゃないか。

 そんな違和感と共に、俺の中で……あのシャーロットとか言う王女様に、不信感がつのっていくのだった。

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