3-22【アンタかよ!!】



◇アンタかよ!!◇


 俺とジルさんは、村の北口までやって来た。

 今ごろは、きっとミーティアも起きている筈だな。

 サッサと仕事をして、みんなで一緒に朝食を食べようじゃないか。


「――見えたな。あの馬車だよ、結構な量を持って来たが……一度で運べるだろうか」


 なら昨日のうちに運んでおいてくれよ……荷馬車なんだろ?

 何台分だよ、家の建築けんちく資材って。


「……あぁ、あれですか?」


 俺の目にも見えた。

 数台じゃないな……大きな馬車に、馬が数頭だ。


「ああ。そうだ……よし、いるな……キチンと待てるじゃないか。やはり命令にはしたがうんだな」


 いる?ああ……そう言えば、奴を待たせてあるって言ってたな。

 ん?――って、一日中待たせてんじゃん!……な、何という罰ゲームだ。

 ご苦労さんだよ、待たされた人。


「――えっと、木材が中心ですね。当たり前ですけど……」


 俺は、大型の荷馬車……トラックの形に近いかな?

 それに乗せられている丸太を見ながら思う。


 うむ。家を建てるには……足りなくないか?


「あの……ジルさ――」


 ジルさんに聞いてみよう。

 そう思った俺だったが……荷馬車から降りてきた人物に、度肝どぎもを抜かれたのだ。


 ジルさんと同じ銀髪。

 褐色かっしょくの肌……するどい目つき。

 嫌でも思い出す、あの時の戦い。


「――なっ!!ア、アンタっ!!」


 バッ――と、すぐさま距離を取り、構える。

 そうしなければいけない相手だと、瞬時に理解して。


「――久しぶりだな……ミオ・スクルーズ」


「どうして……アンタがここにっ!」


 拳をにぎり、二年前を思い出す。

 目の前の男、ダークエルフの騎士――ジェイル・グランシャリオに。





 今にも、俺はジェイルに襲い掛かりそうだった。

 そりゃそうだろ?だって二年前……命がけで戦った相手なんだからさ。

 そんな俺を見て、ジルさんが慌てたように。


「――待て待てミオっ!ストップだ……落ち着いてくれ!」


「ジ、ジルさん……っ!?」


 かばうように、ジルさんがジェイルの前に立った。

 なっ……ど、どういう事だよジルさん!


「ミオ。まずは警戒けいかいを解いてくれ……頼む、この通りだ……」


「は、はぃ??」


 頭を下げるジルさんに、俺はますます混乱しそうだった。

 だが、そこまでされてしまったら……俺だって、折れない訳にも行かない。


「わ、分かりました……でも、説明は……してくれるんだよな?」


 俺は後半の言葉の口調を強くして、ジェイル自身に問いかけた。


「……ああ」


 くっ……素っ気ないんだが。


「――馬鹿者っ!ジェイル、もっと素直になれと言っているだろっ!ミオに謝りに来たんだろうが!」


 スパーン――!!と、ジルさんがジェイルの頭をはたいた。


「……しかし、どう言えばいいかが」


誠心誠意せいしんせいい謝れっ!土下座をしろっ!許されたいのなら、それくらいの気概きがいを見せるんだっ、お前も一応はエルフの王子だろっ!!」


「俺にそんな気は……」


「黙れっ!口答えするんじゃないっ!」


 スパーン――!!


「痛いぞ。ジル……」


 あー、やっぱりそうか。

 そうだとは思ってたけどさ……ジルさんが王女なんだから、その兄貴であるジェイルが王子なのも当然っちゃ、当然だよな。

 でも、ジルさんのこの態度……これじゃあ、どっちが年上か分かったもんじゃないな。むなしい結果だよ、残念ながら。

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