3-21【クラウの目指す場所】



◇クラウの目指す場所◇


 欠伸あくびを嚙み殺しながら、ミーティアはママを手伝っていた。

 朝食の支度したくね……運動もしたし、私もお腹が空いたわ。

 私は、そんなミーティアを見ながら思う。


(なぁにがよく眠れたよ……物凄く眠そうじゃない。そこまでしていい子にならなくても、ママもパパもミーティアを受け入れてるんだし……ねぇ)


 まったく、見栄を張っちゃって……本当に、子供よね。

 転生して二度目の人生の私には、分からない感情だわね。

 でも、少し……うらやましい、かも知れない。

 私は、自分の目標ですら……両親に言えてないのだから。


「ねぇクラウ。これ、好き?」


「ん?……うん」


 ミーティアがつまんで見せて来たのは、トマト……のような野菜だった。

 正確にはトマトじゃないらしいんだけど……味も見た目も、完全にプチトマトだった。


 プチトマトよ――ミニトマトじゃないから、ココ重要。

 私は、前世ではベジタリアンだった……今もだけど。

 監察医をしていた時、ほんの些細ささいな事がきっかけで、肉を食べれなくなったの。


 転生してもそれは変わらないらしくて……少し不満だ。


「それ……最近村で栽培さいばいを始めた……【アイズレーントマト】って言うのよ」


「へぇ……綺麗で可愛いね。こんな小さな【メット】……見たこと無いよ?」


 そうらしい。このプチトマトのような野菜。

 この世界では――【メット】と呼ばれる野菜なんだって。


 でも、せっかくこの村で新たに生まれた品種だし……どうせならトマトと名付けたかった。うん、私が名付けたのよ。


 ミオだけね、反対していたのは。理由は……何だったかしら?

 確か、『意味が分からない名前はよそうっ!』って言ってたわね……トマト……確かに意味は分からないか。

 でもそれを言ってしまえば、【スクロッサアボカド】も同じでしょ?

 それがトドメで、【アイズレーントマト】に決まったのよね。

 ちなみに、私が言ったのはプチトマトで……アイズレーンと名付けたのはパパよ。


「――赤くて、シャーロット王女のひとみみたいだわ」


「……」


 ミーティアが言う、シャーロット王女。

 私も、二年前に聞いたわ。


 ミーティアはそんなことは無いと言うけれど……これだけはどうも信用ならない。

 ミオを狙った?一国の王女が……?何故なぜ


 確かに、二年前のミオは可愛い。

 今はカッコ良くなって、魅力が更に倍。倍の倍。

 そんなミオを狙う王女……?


 初めは、メン食いのいけ好かない女かとも思ったけど……どうやらミオと同じくらいらしい。つまり十三歳か十四歳だ。

 その王女がミオを狙った理由を、私は知りたい。

 それを問い質してやりたい。

 よくも弟を――って、言ってやりたい。


 だから……私は【ステラダ】に行く。

 来年、この村の学校を卒業したら……【ステラダ】の冒険者学校に……通うのだ。


 これは……ジルにしか言ってない。

 むしろ、ジルにすすめられたのだ。

 私は冒険者の才能があるから、と……冒険者になるべきだ……と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る