3-18【目標に向かって1】



◇目標に向かって1◇


 私の名前はクラウ――クラウ・スクルーズ、四月で十七歳になったわ。

 【豊穣の村アイズレーン】の警備隊隊長で、この村の村長の娘よ。


 今私は、前を歩く弟のミオと、銀髪エルフのジルと共に、家路の途中。

 朝の稽古けいこは私の勝ちだったわ。

 姉として、やっぱり弟には負けたくないしね。


 ミオの奴……年々強くなってる。

 二年前、新しく覚えた魔法があると言って使った……あの光をまとう【極光拳オーロラパンチ】とか言う魔法。


 名前はものすっごくダサいけど……私の【クラウソラス】を防いだ魔法だ。

 それだけで、天才的な魔法だと言える。

 だって、転生者のチート武器なのよ?


 私は、ミオが転生者かも知れないと……何度も思った。

 この数年で、何度も……何度も。


 でも、度々たびたびやって来る【女神イエシアス】は、ミオの事を転生者だとは言わなかった。

 女神はうそを言わない。でも、本当の事も言わない。


 イエシアスは、信用できない。

 だから、私はミオをずっと見ている。

 本当に可愛かった幼年期。何度も悪戯いたずらをしてしまった。

 そして、生意気になり始めた数年と……そして今。


 ミオは男になって来てる……くそ……カッコイイ。

 声もいい感じに変わってきて、ホント……腹に響くっ……悔しい!

 弟でさえなければ!何度も誘惑に耐えたのに……こんなに私のタイプになるなんて!!


 あ……いつの間にか家に着いてた。


「――じゃあ、僕とジルさんは」


「ああ。資材を運ぶ……建築けんちく材料だな」


 ジル、そしてミーティアが……うちの隣に家を建てるらしい。

 今朝ママから聞いた話で……本当におどろいたけど、でも。


 私は、ミーティアの覚悟を聞いた時から……血を飲んで我慢することにした。

 本当に、関係性とは怖いものよね。


 初め……私はミーティアを気に食わなかったんだ。


『――私の事、無視したでしょ?』


 二年前、ミーティアと初めて会話した時の……私のセリフだ。

 これに対して……ミーティアはこう言ったんだ。


『ご、ごめんなさい……覚えてないわ……』


 と、本当に申し訳なさそうに言った。

 あの時、ミーティアはミオを見ていた。

 ミオしか、見えていなかったんだと知った。


 どこまでが計算で、どこまでが本音なのか、分からない子だと思った。

 でも、交流を重ねていくうちに……応援してもいいと思ったの。


『ねぇクラウ……私、本当にミオが好き……信じてくれる?』


 私にだけ、ミーティアはそれを言った。

 どうやら……家では信じて貰えていないらしい。

 父親には利益りえきの為の利用手段だと言われ。

 母親には恋に恋する乙女だと……そう言われたそうよ。

 だから、私にだけ吐露とろされた想いを、私はないがしろにはしない。

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