3-15【朝稽古2】



朝稽古あさげいこ2◇


 先制攻撃は、いつもクラウ姉さんだ。

 てか最早もはや奇襲だよな……いいのかそれ?


 でも、俺ももう慣れたよ。


「……【極光拳オーロラパンチ】!」


 ダサい?言うなよ。これでも考えた方なんだぜ?


 俺の右腕に巻きついているオーロラのカーテンは、透過とうかして見えなくなっているが、確実にそこに存在していると分かる。


 その証拠しょうこが……俺がクラウ姉さんに突き出した拳。

 【極光拳オーロラパンチ】だ。


「――それズルいのよっ!!」


 俺は、クラウ姉さんの魔法の剣……【クラウソラス】の刀身目掛けて殴りかかったのだ。


 バチバチバチッッ――!!


 閃光せんこうとなって、魔法の剣とオーロラのカーテンがぶつかり合う。

 俺の能力――【極光きょっこう】は、クラウ姉さんの【クラウソラス】を防げるんだ。


「ズルくないよっ!!」


 跳躍ちょうやくして、俺はクラウ姉さんに殴りかかる。

 勿論もちろん本気でな。そうしないと怒るから、この人。


「ふっ……ほっ……とぉっ!」


 けられるんだよなぁ……まぁ、格闘技なんてやったこと無いし、精々自分に腹が立って壁を殴った事しかなかった前世の俺だもの……当たり前だよな。


 だが、少しは俺も異世界で戦い慣れしてきたんだ。

 盗賊、敗残兵、魔物……そしてダークエルフの騎士。

 ちょっとは自信にもなってるよ。


 だけど……やっぱりクラウ姉さんは強い。

 ジルさんに勝てなくても、俺には勝てる。

 弟に負ける訳にはいかないんだろうな。


 俺だって、今持ってる【無限むげん】と【極光きょっこう】を組み合わせて戦えば、多少なりとも渡り合えるよ。


 でも、それはしない。

 転生者バレ防止……もあるんだが、魔法と言ってしまっている手前、複合魔法(扱い的に)なんぞ使ったら、注目されてしまうらしいからな。

 それは好ましくないんだ。だって充分だろ?


 ド田舎でもさ、美味い飯に整ってきた環境かんきょう、綺麗な母親に姉妹、幼馴染。

 更には隣国のお嬢様……俺は言う事なしなんだよなぁ。


 ブン――!ブン――!


 俺は攻撃を空振からぶりながらも、クラウ姉さんに文句を言う。


「たまには当たってくれてもいいんじゃないのっ!」


「――嫌よっ……!」


 クラウ姉さんは、とっても速いんだ。

 俺の素人パンチなんて当たらん当たらん。

 でも、俺だって動く事には慣れて来てるんだよ。


「ほっ!!」


 そんな事を考えていたら、一閃。


「――うわぁっ!」


 光の剣は俺の首元をかすめる。

 いやいやいやいや!殺す気かよ!!


「ク、クラウ姉さん!今のはダメでしょ!!」


「大丈夫よ……出力は最低限だから、死にはしない……精々しびれるくらい」


 それが駄目だめだって言ってんだよ!!

 くっそ……それなら俺にだって考えがあるぞ!この場所は……【無限むげん】でいじり放題の、資材の宝庫なんだからな!


「――【砂の壁サンドウォール】!!」


 クラウ姉さんの目の前に、【無限むげん】による地面の操作を行ってやった。

 俺の得意技さ。もう確認しなくても使えるまで練度れんどを上げたぞ。

 クラウ姉さんにも、少しは弟の力を思い知って貰わないとなっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る