3-14【朝稽古1】



朝稽古あさげいこ1◇


 分かっているだろうがあの後、眠れなかった俺は、そのまま起きていた。

 もしかしたら……もしかしたらだぞ?


 ミーティアもさ、眠れていないかもしれないだろ?

 だから、朝日が昇って来たのを確認したら、直ぐに布団から出た。

 リビングに行くと、すでに起きていた父さんと鉢合わせる。


「おお。おはよう、ミオ」


「あーうん……おはよ」


 素っ気なくして、俺はそのまま台所に向かう。

 なんでだろうな。四十四歳の精神でも、まるで身体に引っ張られるように、父親に嫌悪けんおを抱いてしまう。


 母親にも、反抗的な態度を取ってしまう。

 そんな気なんか、俺にはないはずなのにさ……


「……反抗期のガキかよっ……くそっ」


 ガン――!!っとコップを乱暴に置き、俺は勝手口から外に出る。

 昨日入ってきた場所だな。


 ふてくされた感じに外に出ると……すぐそこにクラウ姉さんがいた。


「……おはよ、ミオ……早いわね」


「あーうん……寝れなくてさ」


「部屋にミーティアとジルがいたからでしょ?」


 やはり聞いたか。

 そりゃそうだよな。


「まぁね。寝づらいったらないよ……クラウ姉さんは?昨日帰ってこなかったよね……もしかして朝帰り?」


 俺の知ってる限りでは、帰って来ていない。

 昨日の夜に外に出た時も、帰って来ている気配はなかったからな。

 少し意地悪だが、少し八つ当たりだ。


「……ガルスをしごいてたわ……」


「……」


 “朝帰り?”……に対する返答が“しごいてた”……は駄目だめだって。

 しかもなんだ……クラウ姉さんが言ってるとさ、何故なぜか性的に聞こえるんですけど、何でですかね?転生者だからか?


 ああそうですか。

 俺の心が汚れてる……なるほど理解したわ。


「――で?きたえた甲斐かいは?」


「――ない」


 即答かよ。

 ガルスはガルスで頑張ってんだけどなぁ。


「だから、これから相手して……いいでしょ?」


 そうきたか。

 まぁでも、俺も少し身体を動かしたかったし、丁度いいや。


「いいよ。それじゃあ、裏に行こっか……」


「オーケー」


 もうナチュラルに使うよな、地球語。


 気付いたことがある。この世界は、言語が日本語だ。

 更には多少の英語が主流になっている……【ステラダ】に行ってから気付いたんだよな。

 だから、余程の現代語でない限りは、怪しまれる事はないんだ。

 専門用語とか業界用語とかを言わなければ、身バレの危険は減らせると思う。





 俺とクラウ姉さんが向かう場所は、家の裏山だ。

 広めの空間を持っている広間に行く。

 訓練場に近いかもな。クラウ姉さんが作ったんだよ。


「さぁ、いくよミオ……【クラウソラス】っ!」


「いいよ――【極光きょっこう】!!」


 両者、一斉に光を発生させ、姉さんは手にその剣を持ち。

 俺は右腕にオーロラのカーテンをまとう。


「……片腕でいいの?」


「まぁね、姉さんの剣を防げれば、それでいいさ」


「……生意気。弟のくせに……っ!!」


 ――って……言いながら、先制攻撃してくるんだもんなぁぁぁぁ!!

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