3-13【月下のミーティア3】



月下げっかのミーティア3◇


 や、やっちまったなぁぁぁぁ!!


 マジで……やっちゃったのか?何を?俺、なにしたっけ?

 脳内でトイレの話をしたからか?それとも川の話?


 まったく分かんねぇ……くそぅ、泣きそうだ。

 せっかくこの二年、ミーティアともアイシアとも、上手く付き合えていたのに。

 あ、お付き合いじゃないからな?まだ。


「――ミオって……意外とズルいよね」


「……うん。ごめん――ん?」


 ズルい?俺が……?

 ミーティアに対して……か?


「え、え~っとごめんミーティア……僕がしたなにか・・・って……なに?」


 もう直球で聞くしかない。

 それしか、俺には分からないんだから。

 ミーティアも何かを観念かんねんしたのか、隣に座る俺に身体を向けて。

 ゆっくりと言葉を掛けてくれた。


「……ミオはズルい。もう二年だよ?……私が、ミオの事を好きって……そう言ってから……あっという間の二年だった」


 あ……うん。そう、だな。

 もう二年だ。ミーティアが言うように、あっという間だった。


「うん……」


「おかしいよね……お父様に「れさせて見せろ」って言われて……二年。私、まだ何にも進展してないのにさ」


「……うん」


 成人……二十歳までに、俺をれさせる。

 それがミーティアとお父さん、ダンドルフ・クロスヴァーデン会長との約束なんだろう……俺にその内容は分からない。

 だが、彼女は本気で好きと言ってくれている。


 俺は今……その想いを踏みにじる事をしたのだろうか……?

 月の下……光に照らされるミーティアと俺は、それこそ二人だけの空間で何を思うのか。


「……私、時がてばつほどに……君をもっともっと好きになってるの。分かる?」


 俺を……もっと好きに?


「――うん……うん?」


 好きに?嫌い……じゃなくて?


「はぁ~。もうドンドン格好良くなっていくし、背だってもう私よりも高いね……」


 それは……優良遺伝子ありがとう。

 でもそうか、ミーティアが怒っていたんじゃなくて、本当によかった。


 そして――クソほど恥ずかしい。

 俺は……本当に女心が分からん!


「……ねぇミオ」


「……なに?」


「……」


 ミーティアは口元だけを動かして……なんて言った?


「え?ごめん……もう一度言ってくれる?」


「……」


 声にしてくれ頼むから。

 分からん、俺に読唇術どくしんじゅつの心得はないんだ。

 せめて耳を近付けて……少しでも聞き取れれば。


 俺が身体をかたむけて、少し耳を向けた瞬間。

 ミーティアは、俺にグッ――と近付き……直接。

 俺の耳に、その言葉をはっしたんだ。


「――大好きだよ、ミオ」


「――わっ……っ!!」


 だぁぁぁぁぁ!!ヤ、ヤバい!破壊力がやばい!!

 溶けるって、脳が溶ける!!


「うふふ……耳まで真っ赤よ?……ミオ」


 月に照らされるミーティアは、年の近い少女でもあり。

 しかし三つも離れた、しっかりとした年上の女性だと……存分に知らしめられた俺だった。


「……さ、そろそろ戻りましょうか。明日は早いのよ?」


「あ、うん。だね」


 皆。もうお分かりだろう。

 俺はこの後、一睡いっすいも出来なかったんだよ。

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