3-11【月下のミーティア1】



月下げっかのミーティア1◇


 深夜、二人で外に出た。

 そう言えば、今日は丸一日クラウ姉さんを見てないな。

 なにしてたんだ?あの人。


 少し歩き、俺とミーティアは【コレッタ川】にやって来た。

 うん、そうだな……以前まではトイレになっていた所だよ。


 でも、今はもう違う。

 俺が必死になって下水を引いたからな……近くに川があるから出来る芸当だよ。


 【無限むげん】で地下を掘り、その地面の硬度こうどを相当高めた。

 だから、崩落する事だけはない。

 そしてそこから道を作り、【コレッタ川】から水を流す。

 水源が近いから、それほど困らなかったよ。


 でもって、各家に作ったトイレだが……これは、【ステラダ】の町の魔法の道具。【巡廻の水晶石】なるものを大量購入して、地下の水と繋がるように設定をしたのだ。

 効果がキチンと発揮されるかは不安だったが、うまくいってくれた。


 その結果……見事、こんなド田舎の村に、水洗トイレの完成だ。

 使用した汚水は、地下に別途べっとに作った奈落に流れていくようにしてある。

 町の下水道とは大幅に違う仕様だが、はっきり言ってこれで充分だし、水道代がないんだぞ、良心的だろ?


「……綺麗な川ね……水音がサラサラしてて、いやされるわ」


 俺が村のトイレ事情を脳内で解説していたら、ミーティアが言う。

 ご、ごめん……変な話題の脳内トークしてて。


「あはは、それなら整備してよかったよ」


「え……?」


 そりゃそうだ。

 この川は、もともとそこまで綺麗に流れてはいなかったんだよ。

 どちらかと言えば激流だったかもな。


 その理由は、水源地が山である事と。

 その川の中には結構な数の大きな岩石があり、それが流れを複雑にしていたんだ。


「ああ、僕が魔法で流れをゆるやかにしたんだよ……潜って魔法使って……流されて……潜って魔法使って……流されて……潜って……しんどかった」


「た、大変だったんだね……」


 本当にな。クラウ姉さんに命令されなければ、やってないから。

 だが、良い事も多大にあった。

 以前よりも魚も獲れやすくなったし、綺麗な水もめる。

 綺麗になった事で、魚の種類も増えたんだよ。

 まぁ、その後すぐ、村の中央に井戸を掘ったから、意味あんのか……とも思ったけどさ。


「うん。でも、村の皆が喜んでくれたから……いいや」


 俺はニカッと笑って、ミーティアを見た。

 村の皆が喜んでくれたのは事実だし、魚も美味いしさ。結果オーライだ。


「……」


「ミーティア?――えっ?」


 え、無言かよ。っと思って彼女を見た……のだが。

 月明かりに照らされる彼女は、とても……赤面していたんだ。

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