3-10【隣にいるよ?】



◇隣にいるよ?◇


 ジルさんは、「そろそろだろう」と言ってミーティアに報告に行った。

 確かに、そろそろ話が終わってもいい頃かも知れないな。


 それにしても、かなわないよな、本当にさ。


「いてて……」


 俺は頭をさすりながら、思い返す。

 柔らかかったな……うん。

 ふふふ……そうか、あれがおぱーいか。


 前世では辿たどり着く事が出来なかった場所に、踏み入れてしまった。

 十四歳……前世の約半分で到達だぞ?


 これは、期待してしまうよな……その……ほら、なぁ?

 でも真剣に、真摯しんしにな。

 最低男にはなりたくないって事だよ。


「お?終わった……っぽいかな?」


 部屋の外が急に静かになった。

 契約内容は、従業員の件と畑の拡張、そして家の隣への建築けんちく

 建築けんちくは仕事とは無関係なのだろうか?


 そうだとしても、明日から忙しそうだな……

 ああ、だから休日前に来たのか……考えてんなぁ。


 コンコン――


「……はい?」


 家族だったなら無遠慮ぶえんりょにそのまま入ってくる。

 だから、ミーティアかな?


「ミオ……入ってもいいかな?」


 ビンゴだ。


「どうぞ?」


 カチャリと、ゆっくりひかえめに開かれる扉。

 な、なんとも中途半端に開いたな。


「……えっと、ミーティア?」


 隙間すきまからのぞこうとしたら、ミーティアもちらりとこちらをのぞいて来た。

 当然……目が合う。


「「……あ」」


 か、かわ……照れちゃうって。


「え、えへへ……なんだか緊張しちゃった」


 俺もだよ。


「――お嬢様……早くお入りください、寝ますよ?」


 後ろからジルさんが追従ついじゅう

 あーほら、そういう事言うから……めっちゃ見てるじゃん、ミーティアが。


「もうっ……分かったわよ、失礼するね、ミオ」


 テンション落ちちゃったな。


「あ、はい……せまいですが」


 俺は扉を完全に開けて、二人をまねく。

 どうぞどうぞ。マジで何もないですけど。

 逆に安心できるくらいだぞ。前世の部屋だったら、引くくらい掃除してからじゃないと入れられない。隠すもんだってあるだろ?


「……男の子の部屋だぁ……」


 あ、やめて恥ずかしい。

 そうか……そういえばそうだ。

 アイシア以外の女子が、俺の部屋にいるんだ……ジルさんもな。


「――よし。では寝ましょうか、お嬢様……明日も早いですし、あ奴も待たせていますからね」


 展開はやっ……って、あ奴・・

 どこに?誰が?――って、ジルさんテキパキなんだが。


 行動が早いって!布団をくの!!

 修学旅行で速攻寝る奴じゃん!!


「ご、ごめんねミオ……」


「い、いや……ははは、大丈夫だよ」


 もうあれだな。

 これは寝るしかないな。





 俺の部屋に、ベッドはない。

 以前の家の子供部屋もそうだったが、布団で寝ていたのだ。


 前世の俺。信じられるか?

 隣に、女の子が寝ています……信じられないだろ。

 レイン姉さんやクラウ姉さん……姉じゃないんだぞ?


 うん。駄目だめだった。

 さっき寝るしかないって言ったけど……もう興奮こうふんして寝られないです。

 ごめんなさい。


「ミオ……寝られないの?」


「あ、うん……少しね」


 わっ――っと……お、起きてたのかミーティアも。

 ミーティアの隣では、豪快に寝てるエルフの王女様がいるけど。


「じゃあ……少し、話す?」


「そう、だね」


 そうだな。それもいいだろ……じゃあ、外に行こう。

 隣のエルフにも悪いし……まぁ、起きそうにはないけどさ。

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