3-9【無限の活用法】



無限むげんの活用法◇


 ショックだよ……ハッキリ言って、物凄くショックだ。

 二人の姉と妹から解放された、俺の、俺だけのオアシス。

 念願ねんがんの一人部屋に、ミーティアとジルさんが寝泊まりすんの?


 はははっ……おかしいだろ!

 なんで俺の部屋なんだよ!……って言えれば、どれだけ楽か。


 そう、俺の部屋しか選択肢が無かったんだ。


 何故なぜならこの家は、夫婦の寝室と、姉妹三人の部屋、そして俺の部屋、後は物置だ。

 客室が無いのは、父さんの楽観的な考えのせいで……作らなかったんだよ。

 そもそも人が少ないせいで客が来ないと言うのもあるが、基本的にはお客は集会所に泊って貰っているからな。


 なら、そうしろよって思うだろう?俺も思う。

 でも、今は・・そうはいかないんだ。

 集会所は現在、豪雨のせいで水浸みずびたしなのだ。


 現在、地球で言えば六月半ば。

 そう、梅雨つゆだ。

 そして集会所は、昔から一度も建て直しなどをしてこなかった。

 落ち度と言われればそれまで……村長が謝れよっ!


「はぁ~」


 ガックリと項垂うなだれる俺を見て、ジルさんが肩を叩きながら言う。


「ははは……そこまで落ち込むことはあるまい、数日で終わるのではないか?そうすれば直ぐにでも一人に戻れるさっ」


 無茶を言う~~~~~~。

 俺は更にガックリ来てしまうよ……言っておくけど、【無限むげん】は有限なんだよ……魔力がな。


「あっははは……なんだミオ、冗談だよ冗談。エルフジョークさっ」


 もうなんなんだよっ!

 二年前も聞いたよ、エルフジョーク!!


「冗談なしに、魔法には限度があるからな。当然それも織り込み済みさ……安心しろ」


 なら初めに言ってくれよ……頼むから!


「なら、小屋でいいですね」


 少し意地悪してやる。

 ふふふっ……


「ふむ、それでもいいが……そうなると、寝泊まりは一生ここになるな。よろしく頼むぞ、ミオ」


 ――!!


「――す、すみません!!ごめんなさいっ……意地が悪かったですっ!」


 うわぁぁぁぁ!ジルさんの方が一枚上手だったぁ!!

 年の功には勝てなかったよ……無念。


「おいミオ。今失礼なことを考えたな……?」


「え、いや……あ!ちょっと!!」


 ピクリと反応したジルさんは、叩いていた肩から手を動かして、俺の頭を固めに来る。

 ヘッドロックだ。


 だぁあぁっぁぁ!!いてぇぇぇぇぇぇ!!けど柔らかっっ!!

 当たる!当たる当たる!何がとは言わんが大きいものが当たるぅぅぅ!

 めちゃくちゃいい匂いなんだが!?なんだこれ!飛ぶ!!飛ぶって!!

 エルフの王女さまの脇パイ最高かよっ!!


「――どうだミオっ!参ったかぁ?ほれほれっ」


 いででででででででっ!あ~柔い。

 もう情緒おかしくなるわ!!こんなもん!!


「わ、分かりました!全力で当たらせていただきますっ……だ、だから離れてっ!」


「うむ。それならいい」


 あ~~。マジで痛気持ち……じゃなくて痛かった。

 この人も……本当に自覚がないな、自分が超絶美人だって事。

 もうさ、俺の回りこんなんばっかじゃん……いやしが欲しいよ……なぁ?

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