3-1【俺だって、男だ】
◇俺だって、男だ◇
まるで思い出させるように、前世の事を夢に見た。
自分が刺される瞬間の、言わば悪夢だ。
スローモーションのように、ゆっくりとその刃は俺の胸に迫る。
あーこれは死ぬわ。
そう言えばアイズレーンが言ってたっけ、俺……勘違いで刺されて死んだんだ。
しかしこの夢で見ると、勘違いと言うか……まるで障害物だな。
あの地雷系メイクの女……よく見るとめっちゃ若いじゃないか。
どうしたら、その若さでそこまでの殺意を持てるんだよ。
何か嫌な事があったのか?誰かに何か……そうか。向こうにいる男か。
ただの通行人が、振り向いた瞬間刺されれて、
どれだけの復讐心で行動したんだよ。俺には理解不能だね。
勝手な理由だよな……人を殺しておいて。
でも、もう会う事もないだろ。だって俺は異世界に転生したんだ。
しかし赤ん坊からのスタート、しかもド田舎。
やる事も限られる中で、ようやく十二歳……いや、もう直ぐ十四歳なんだよな。
赤さん時代からの苦労に比べれば、ファンタジーをしているのではないだろうか。
温かい家族に可愛い幼馴染。
運命の出会い……なんては言えないけど、青い髪の綺麗な女の子とも出会った。
女神に振り回されてる感じも
もう直ぐ前世の半分か、長いようで短かったな。
今後はどうだろう。
俺はもう、このド田舎でスローライフをしていくものだと思い込んでた。
農家の息子だし、時間がゆったりとした村の中で、幼馴染かお嬢様か、そんな贅沢な二択を迫られて。
いっそ二人共……だなんて考えた時もあったが、そんな不条理は認められない。
そんなルールはないんだからな。絶対にどちらか……アイシアかミーティアのどちらかと、俺は恋愛……出来んのかな。充実のスローライフなんて……目指せるのかな。
◇
あれから――二年の月日が
あの日……あの戦いから、俺は完全にミオ・スクルーズになったのだと思った。
二年前、退院して村に戻った俺は……案の定クラウ姉さんにボコボコにされた。
まぁ言葉だけであれだけどさ、心配させてしまったんだという事で、心をボコボコにされた……って事な。
レギン母さんもコハクも、とても心配していてくれていてさ、申し訳なくなった……でも、同時に思ったんだ。
やっぱり、家族は最高だ……って。
もう心配をかけたくないよ……だから、この二年……俺は余り行動をしなかった。
と、言うよりも、実態は……クラウ姉さんからの監視が更に
特に語るようなことがないまま……一年、そして二年。
本当にあっという間だった。
軽い出来事を言えば、どれだけ語っても時間が足りないけどさ。
ミーティアとの事だったり、アイシアの事だったり……色々さ。
でもって……更に過保護になった二人の姉と、心配性の属性がついてしまった妹に囲まれた二年間だ。
その間もアイシアとは学校で毎日会い。
ミーティアは一ヶ月に一度は村に来てくれて、会っていたよ。
まぁ、その話はそのうちにするとして……俺、ミオ・スクルーズは十四歳になった。もう……男と言ってもいいかも知れないな。
身長は165㎝。サラサラだった金髪は、遊びを入れて跳ねさせたりもしている。
後ろ髪も伸びて、少しだけ結んでいるんだ。
まぁ、そうだな。
色気づいている……そう言われても仕方がない。
返す言葉もねぇよ。
それに怒ったのが……父さんだった。
もう血管ブチっ――て来たね。俺だって、せっかくいいお顔を手に入れたんだ。
正直言って色々遊びたい。
だってそうだろ?前世では、髪を遊ばせたことなんてない。
染めた事だってないからな。
だから俺はルドルフ父さんに――「いいだろ!!うるさいっ!」って……キレた。
反抗期……なのかな?
家族が大事なんじゃないのかって?
大事さ……でもそれとこれとは違う。
前世ではなかったからな、そういう機会すらもさ。
レギン母さんは「仕方ないわよ、お年頃だもの」と理解を示してくれていたのだが、父さんは
あんた昔、遊んでたんじゃなかったのか?なんでそんな
そうだよな。父さんは……この【豊穣の村アイズレーン】の、村長なんだもんな。
二年前……正式に、この村の名は【豊穣の村アイズレーン】となった。
その案は、【クロスヴァーデン商会】の会長さん、ダンドルフ・クロスヴァーデン会長が申し出てくれたんだ。
数ヶ月かけて、色々と準備もしてくれてさ……契約の時に色々あったらしいけど、それは会長と父さんの話だからな。詳しい話は知らないんだ。
そして、その野菜だ……もう絶好調、絶好調も絶好調だ。
【クロスヴァーデン商会】の
【リードンセルク王国】の他にも、様々な近隣諸国に売り出してくれて、もうウハウハのガッポガポですよ……農業金持ちって奴だな。
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