2-96【追いかけっこ2】
◇追いかけっこ2◇
ジルさんと、立ち
俺には関係を探れるような余裕はなかった。
張り
「――ぐっ……うぅ」
「ミオくん!!」
「ちっ……ミオ!!」
身体を動かそうとすると、ズキズキと心臓が張り
何でこんな時に……俺はいつもそうだ、タイミングが悪すぎる。
「――いいからその子を寄こせ、ジル。黙って
「ふざけるな!誰がお前に……お前なんかにっ!!」
「――ジルリーネ!伏せてぇぇぇぇ!!」
ミーティアさん?叫んで何を――
ボッフゥゥゥゥゥゥゥ――ン……
「――なっ……!くそっ……小麦だと!?おいっ!ジル……逃げても無駄だぞ!……!……っ……!!」
男の声がどんどん遠くなっていってる。
身体も揺れる。多分、ジルさんが走り出したんだ。
◇
「――助かりました……お嬢様」
「ううん。いいのよ……でも、あのパン屋さんには、あとで謝らないとね」
そうか。パン屋の路地裏だったんだ。
そこの裏口にあった小麦の袋を、
機転が利いてるな。
「来ては、いないようだが……」
ジルさんたちも、身を隠したのだろうか。
くっそ……まだ目が開かない。
痛みに言葉も出せなくて……
何のための能力だよっ。
「ねぇジルリーネ、あのエルフの騎士だけど……もしかして、知り合いなの?」
それは、俺も気になるけど……さ。
ジルさんは、一瞬だけ間を置くも……答えてくれた。
「……あの男の名は、ジェイル・グランシャリオ。エルフの剣士です……そして、わたしの……腹違いの兄です」
「えっ!?でも……ダークエルフで」
腹違いの兄?……いやでも、ミーティアさんの言う通りだ。
ジルさんはエルフ……男はダークエルフだろ?
「あ奴の母が、ダークエルフなのです。あの男は、十歳離れた……わたしの兄なのですっ……!」
心の底から
本当に、あの男……ジェイルって奴を
そんな
「あの人、どうしてミオくんを……?」
「それはわたしにも分かりません。急すぎて、なにがなんだか……」
本当だよ。
ここにいる誰も、理解が追い付いていないんだからな。
「――うっ……ミーティア……さん」
よし……話せるくらいには回復した。
「ミオくん!」
「ミオっ!」
ジルさんは俺をそっと座らせてくれる。
ああ、呼吸が出来る……それだけでも幸せなんだが。
「ふぅ……ふぅ……はぁ……」
「ミオくん……大丈夫?」
「はい……すみません、急に」
本当に申し訳ない。
でも、何だったんだあの痛み、
それこそ死ぬかと思ったぞ。
「私はいいんだけど、あの男の人……ジェイルって人……知ってる?」
当然、俺は首を横に振る。
当たり前だが、ダークエルフに知り合いなんていない。
ダークエルフの存在も、今日……と言うかさっき知ったばかりなんだから。
「――そうか……だが、どうしてジェイルはミオを……――!!ちっ……速すぎるだろっ!!」
バッ――と振り向き、俺とミーティアさんを
「ジルさ――!」
「……相変わらず、詰めが甘いな。ジル」
もう来たのかよっ!?結構な距離を、ジルさんは走ったぞ!?
「……いい加減にしろジェイル!……こんな子供を追いかけまわして、いったい何がしたいんだっ!答えろっ!」
「――先ほども言っただろう……お前には関係ない。下がれ!」
クソったれ……なんなんだよこの男っ!!
まるで話の通じない仕事人間に、俺は混乱しながらも、どうにかしてこの場を乗り切る方法を、必死になって考えるのだった。
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