2-95【追いかけっこ1】



◇追いかけっこ1◇


 本当に、ゴミのような人間ばかり。

 大変詰まらないわ……でも、ここから何人を殺せるかしら?

 まぁでも、面白みのない奴をっても、ぜんぜん楽しくないのよね。

 だから、早い所獲物えものを――


「……ん?」


 金髪の……子供?が、膝を着いて苦しんでいた。

 その苦しそうにうずくまる子供に、「ミオ・・くん!」と、隣にいた女が叫んだ。


「……」


 ああそうなの……こんなに近くにいるなんて、まるで運命ね。


「……くふっ……ふふふ……」


「――シャーロット殿下でんか?」


 ああそう、そうよね、胸が痛いの?

 そうに決まってるわよねぇ……だって、私が刺したんだもの……痛いわよねぇ?


 心までむしばむように、来世でも痛むように……私が込めたのだもの。

 ありったけの恨みを、あの時の刃に……でも、お前が私を邪魔したのよっ!!

 お前が居なければ……殺せたのにっ、私をだました……あの男を!!


「ジェイル……」


 だから言おう。

 あの子供を……連れて来いと。


「――はい」


「あそこにいる子供を連れてきなさい。あの金髪の……うずくまっている子よ?」


「……あの子、ですか……?――!!」

(――なっ!……ジ、ジル!?)


「どうしたの?早く行きなさい……命令よ?」


 ジェイル・グランシャリオに命令をし、さっさと連れてくれば御の字。

 しかし、この人ゴミだ。邪魔者が多い。


「……はい。かしこまりました、シャーロット殿下でんか


 ジェイルは子供を連れてこようとしたが、その前に。


「――ちっ」


 誰かが子供を連れて行った。

 それを確認して、ジェイル・グランシャリオも駆け出した。

 私は小さく舌打ちをして、それをながめる。


 銀髪の女だったわね……邪魔をしてくれる。

 でも、まぁいいわ……少しだけ面白いじゃない。


 狩りおいかけっこの始まりね……武邑たけむらみお





 くそっ……胸が痛てぇ……心臓が張りけそうだ。

 動けない――息が苦しい――身体が熱い――目がチカチカする。

 記憶が……曖昧あいまいになりそうだ。


「――ジ、ジルリーネ!だ、誰かが追いかけて来てる!……なんでっ!?」


 ミーティアさん、何をそんなにあせっているんだ。

 誰かに追いかけられてる?急に?訳が分んねぇよ。


「――あれは……なっ!?」


 ジルさん……何かに気付いたのか?

 でも、なんでだよ、目が開けられない……畜生ちくしょう


「待ってもらおうか……ジル」


 ザザザザッ――と、俺をかかえるジルさんが急ブレーキをかけた。

 力が伝わる。痛いくらいだ。


「……だ、だれなの……?」


「……」


 ミーティアさんも知らない人なのか……でも、ジルさんを呼んだ。

 男の声だ。目的は……?


「――その子供を引き渡せ、ジル」


「――断る。ジェイル……今は引けっ!!」


 ジェイル?誰だ……?

 そうか……もしかして、さっきのダークエルフか?


「すまんが。用があるのはお前ではない……その金髪の子供だ」


 金髪……俺をか?

 俺が狙い、なのか?


「――何故なぜだっ!この子は苦しんでいるんだぞっ……医者に見せなければっ!!」


「それは俺には関係ない事だ。俺は命令を遂行すいこうするだけだからな……」


 ああ、駄目だめだ。仕事人間だこの男。

 融通ゆうずう聞かないタイプの男だ。


「くっ、お前がそんなんだから……父様はっ!!母様はっ!!」


 なんだ、ジルさん……そんなに力を込めて。

 その言葉で、その男にいったい何を伝えようと言うんだよ。

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