2-87【恋と呼べるのか?】
◇恋と呼べるのか?◇
私は……あの日、ミオくんに未来を見た。
彼に助けられたのは偶然じゃなく、必然……運命だったのではないかと。
彼に見た未来、それは自分の未来だ。
しかし、それは自分勝手にも程があると理解している。
彼の思いも努力も、自分のために利用しているようで、
でも……そんな事は百も承知だった。
昔から、自分を好きだと思ったことはないし……この青い髪も、青い瞳も、呪われたものだと思って生きてきたんだから。
それでも、私は進もうと思ったの――彼と一緒なら、どんな事も乗り切れる。
そう思えたから、こうして積極的にアピールも出来る。
誰かに負い目があっても、誰かに不釣り合いな私でも、自分の人生を決めつけられるのは嫌だった。
だから、私は彼に出会ったんだ……私のヒーロー……私の“運命の人”。
「……失礼いたします、お父様」
扉を開けて、私は入室をする。
机につく父は、書類を見ながら言う。
「どうした?母さんはもう寝たのかい?」
「はい……もうお休みになられました」
「そうか……」
それだけ言って、書類に視線を戻す。
父は、まだ仕事中だった。
明日も朝早くから、ミオくんのお父様……ルドルフさんと契約の為のお話がある。
それでも、まだ起きている。
家庭を
その事実を
でも、父親としてはどうなのだろうと、何度も考えた。
この人は……私が
「……お父様、お話があります……少しでいいので、お時間を頂けますか?」
「ああ……私もだよ。ミーティアに伝えておきたい事があったんだ……」
「……え?」
父からも話があったとは……想定外だった。
しかしそれだけで、私の考えは
「――まあそこに座りなさい……今、茶を入れよう」
「あ、それなら私が……」
ペースを
自分のペースに戻さないと……
「いやいい……座っていなさい」
父は
紅茶も、
それを邪魔するつもりではないが、私だって幼少から習い事を多くさせられている。
これでも、それなりに出来るのだ。
見せる機会をくれてもいいのに……と、思う時だってあるわ。
「お、お父様……明日は」
「ん?ああ……【スクルーズロクッサ農園】との契約の会議があるよ。それがなんだい?」
父はきっと分かっているんだ。
私が言い出そうとしている事など。
「私は明日……ルドルフ様のご子息、ミオくんの案内をします」
「おお、そうだったな……今日着いたと、ジルリーネから聞いたよ」
「……はい」
私はあの日、父がジルリーネと一緒に村に迎えに来た時に、打ち明けている。
ミオくんに、特別な好意を
父は
そんな所が嫌いで……でも、商人としては
だから私は……夢の為に、自由の為に手を伸ばすの。
「――ああそう言えば。あの村で言った事……まさか本気なのか?」
「――え?」
紅茶を
いい香り……だけれど、今のは?
「ルドルフ殿の息子……ミオ君。ふむ、確かにいい男だったな……将来は有望だろう。だがな、少し早くはないか?」
急に何を言うのよ……私が彼に好意を
「――
そう、私は本気だ。
本気で彼を――
「そうか……しかしそれは――本当に恋かい……?」
「……え?」
父の口から出た言葉とは、到底思えなかった。
「どういう……意味ですか?」
「そのままだよ。恋かい?それは……恩ではなく?」
痛い。心に突き刺さるようだった。
「――あ、当たり前ですっ……私はっ!助けてくれたミオくんを、本気で好きなんですっ!」
気付けば、叫んでいた。
立ち上がって、ムキになって……子供のように叫んでいた。
それは、私の
「そうか。ふむ……それが恋なら、相手は誰でもいいんじゃないかな?助けてくれたのが他の誰かでも……ミーティアはきっと今と同じ事を言っただろうね」
「――!!」
心を、そのまま直に殴られたようだった。
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