2-84【ギャルってすげぇな2】



◇ギャルってすげぇな2◇


「――はいっ!お待たせしましたお客人っ」


 金髪ネコミミギャルのキディさんが戻って来た。

 まかないとは思えない、大量の食事を持ってだ。


「そ、その量は……」


 腹ペコだとは言ったけどさ、山盛りすぎるのよ。

 両手で持つその大皿には、数人分の食事が乗っている。


 ありがたいんだけど……俺じゃないんだよなぁ、食べるの。


「あれれ?これじゃあ足りなかったかなぁ?」


 そっちじゃない!!

 いや、だが感謝だ。


「いえ、ありがとうございます……お代は」


 俺はポケットから現金を取り出そうとして、まさぐる。

 仕方ないだろ!急だったんだから、財布忘れて来たんだよ!

 前世の時もこういう時があったから、服に多少の金額を忍ばせるくせがついてたんだ。


 おっさん……?

 うるせっ……悪かったな!


「――おっとお客人!お代はいらないぜぃ!?」


「いや、そういう訳には……」


 ネコミミギャルは「ふふふん」と鼻息荒く、獣耳をピコピコと動かしながら言う。

 何だその動き……可愛いなぁおい。


「いいのだよお客人、このご飯はあくまでまかない。メニューにはないんだからねっ!」


 でも……凄い量だぞ?

 流石さすがいくらか払うよ。いや、払わせてくれ。


「……でも、こんなにあるんで」


「も~!いいって言ってんじゃん!気にしないでいいってばぁ~!ほらほらっ、持ってきなって!」


 俺の背をバッシバシ叩いて、挙句あげくには肩を組むキディさん。

 す、凄いな……この人のコミュ力。


 ちらりと横目で見ると……ニカッと歯を見せて笑う。

 猫のような八重歯と笑顔がまぶしいんだが。


「それじゃあ……いただきます。ありがとうございます……キディさん」


「にゃ。たんとお食べよ、お客人!大きくなりなさいっ!」


「!」


 にゃ!って言うんか!

 な、何だか変な感動があるな。

 前世のままだったら、きっと……コスプレ感がいなめない!と、なげいていただろうが。


 安心してくれ、ここは異世界……最高じゃないか。最&高だ。





 優しいネコミミギャルのおかげで、俺は食事をゲットした。

 これで、レイン姉さんに鱈腹たらふく食べさせてあげられるってものだ。


「はぁ~……疲れた」


 自分の部屋に戻り、安心して一息くと。


「ミ、ミオ~」


 死にそうな顔をする、俺の姉がいた。


「お待たせレイン姉さん……ごめんね、遅くなって」


「ううん……そんなことないよ~……こっちこそごめんね。私、お姉ちゃんなのに……」


 いいんだよ。沢山お食べ。

 もう――グゥゥゥゥ……って、腹が鳴ってるからね。


 それにしても、この料理は何と言うのだろう。

 皿一杯の……パン、だよな?


「全ての恵みに感謝を。全ての命にいつくしみを……いただきます……」


 両手を合わせ、家でいつも言う言葉で天に感謝するレイン姉さん。

 律儀りちぎだね。この子は。


「あむ……ふ~~~んっ!おいひぃ……」


 幸せそうだなぁ……ほほが緩んじゃってさ。

 なんだろうな、これ。


「――ミオも食べる?」


 片手を口に当て、もう片方に持つそれを、レイン姉さんは俺に差し出す。

 正直腹は減ってないのだが……まぁ。


「……あむっ」


 出されたら食うだろ。

 ――うんまっ!!


 そうして、沢山あったそのパンらしき食べ物を、俺とレイン姉さんは全て平らげた。勿論もちろん、その大半を……レイン姉さんが一人でな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る