2-63【豊穣の村5】
◇
事の
顔を青くして俺を心配するミーティアさんと、気が動転する父さん。
それを
一発、父さんを平手打ち。
ミーティアさんの肩を揺さぶって、正気にさせたんだとさ……これは、後でクラウ姉さんに聞いた話な。
そして、俺は二日間も寝ていた……と、言うよりは、気絶に近いのだろうかと思う。
そして翌日、ジルリーネさんがダンドルフさんを連れて来た。
ジルリーネさんは余程信頼されているのだろう。ダンドルフさんは終始笑顔で、ミーティアさんと他の二人の無事を喜んでいたらしいよ。
そして、肝心の商談だ。
何でも、言い出したのは俺の父さんらしい。
その場にいたミーティアさんが
商談は父さん同士、二人で行われたから詳細は俺にも……誰にも分からない。
では、
結論から言えば……最大の理由はジルリーネさんだった。
ジルリーネさんの、ダンドルフさんからの信頼はえげつのないものだった。
彼女は……なんとエルフの王女様らしい。
銀髪でエルフで騎士で王女だってさ……ははは……テンプレ過ぎて笑ったよ。
でも……そのおかげで、村の未来が見えたんだ。感謝しかないよ。
父さんもさ、俺が魔法を使い、ぶっ倒れてまで本気を示した事で、商談をする気になったらしいな。
もっとも、ダンドルフさんが積極的じゃなければ、商談にすらならないで終わっていただろうけどさ。
◇
そして現在だ。俺たちは外にいる。
帰るんだよ……ミーティアさんたちが。
そもそも、昨日
【リードンセルク王国】、ミーティアさんが住む町の名は【ステラダ】。
目的地はそこだ、【ステラダ】の【クロスヴァーデン商会】の本社で、契約だ。
そう、正式な契約……【スクルーズロクッサ農園】と【クロスヴァーデン商会】の専属契約だ。
「――じゃあ、行ってくるよレギン」
「ええ、気をつけてね……あなた」
「行ってきます、ミオ」
「行ってらっしゃい、父さんも……レイン姉さんも、気を付けて」
大型の馬車に乗り込む、経営者の父さんと、付き添いのレイン姉さんだ。
本当は俺が行くべきなんだろうけど、病み上がりでレギン母さんに怒られた。
頼むよレイン姉さん。父さんを……いや、父さんならもう大丈夫か。
「ミオくん。お父様とレインさんは、私がしっかり案内するからっ……だから――」
ミーティアさんは少しだけ悲しそうに。
だから、俺は安心させられればと……満面の笑みで言う。
「はいっ。ミーティアさん……父と姉を、お願いします!」
「――う、うんっ!!」
差し出された白く細い手……がっしりと握手をする。なにも最後じゃないんだ。
うちの野菜が繋ぐ……未来があるんだからな。
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