2-59【豊穣の村1】



豊穣ほうじょうの村1◇


 俺の魔法……と言うてい・・を見た父さんは、本当におどろいていた。

 まぁ、俺は土をいじる魔法と言っていたし……当然だろうな。

 当たり前だが、ここに土はない。俺も……少し賭けに近かったんだよ。


 アボカドが植物な以上、土と水は必要不可欠だ……その両方がない状態で、手の上の種はどうなるのか。本当は事前に試しておけばよかったんだが。

 でもまぁ、一発成功だしいいよな……?


「ミオ……ではまさか、その魔法が無いと……?」


「うん……この果実は育たないと思う。多分、だけどさ」


 正確な育て方を知らない俺には、無責任に大丈夫とは言えないんだ。

 育てるのには、少なくとも十年近くの歳月が必要なはずだったと、そんな覚えしかない。


「父さんが駄目だめだって言うなら、僕が個人で……ミーティアさんと一緒に交渉しようと思う」


「――ミ、ミオくん!?」


 ミーティアさんは、それは違う。と言う顔をしているな。

 そうだよ……分かってるんだ、俺だって嫌だ。

 せっかく、家族が皆で育てた野菜たちを売り出そうと言うのだ。

 自分から外れて行きたくはない。


 でも、俺はミーティアさんの考えも分かるから。

 きっと、その野心は叶う。

 叶えるために、彼女は真剣に、真摯しんしに進んで行くだろう。


 俺の事なんて……利用・・でいいさ、利用でいい。

 それでも、彼女を応援したいと思ってしまったんだ。


「本気なのか……?」


「うん……僕も分かってるよ。子供の言ってる事だってさ、でも……彼女、ミーティアさんの本気度は伝わるでしょ?ミーティアさんは本気だよ。僕だって……こうして魔法を打ち明ける程度には……本気さ」


 笑いながら父さんに言う。

 【豊穣ほうじょう】による緑色の発光は続き、アボカドの芽はどんどん伸びる。

 もう数十センチだ。

 だが……ここに来て。


「――!……?」


 ぐっ……な、なんだ急に……倦怠感けんたいかん?吐き気?

 ま、まさか……能力の使い過ぎか!?何でだよっ!朝はもっと使ったぞ……!


「父さん……出来れば、父さんにも母さんにも、姉さんたちにも……協力してほしい。せめて……僕が……大人に、なるま……で……」


「ミ、ミオ!?」


「ミオくん!!ひ、酷い顔色……もしかして……魔力が?」


 ああ、そうか……魔力が切れたのか。

 だからこんなに……疲れて……


 あ……やべぇ……意識が。


 ガタン――!!


「ミオくん!!」


「へ、へへ……す、いません……」


 あぁもう、カッコ悪いな俺……せっかく【豊穣ほうじょう】まで使ったのにさ……これ、完全に気を失っただろ?

 多分そうだ、めちゃくちゃ頭痛いもん……打ったんだろうな。情けねぇ。

 本当に……情けねぇよ、そうだろ?女神様よぉ……

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