2-48【急成長する木2】



◇急成長する木2◇


 俺は腕捲うでまくりをして、種を植えた土の真上から両手を重ねる。

 まるで心臓マッサージをするかのように、息を吸い。

 アイシアに向けて、魔法を使うよ~と伝えるように叫ぶ。


「――【豊穣ファティリティ】!!」


 まるで発動の呪文のように、【無限むげん】の短縮名のように。

 めちゃくちゃ安直だけどさ、関連するワード……それしか知らないし。

無限むげん】がインフィニティでいいなら、これでいいだろって思うじゃん?


「ふわぁ……それがミオの魔法なんだねぇ……」


 ほらな?信じたし、これでいいだろ?

 俺が両手を当てる地面は、ドクン――と、それこそ心臓のように鼓動こどうした……気がする。

 かすかに温度を高めた俺の手。微量に放出される魔力。

 その魔力は地面に入り込んでいき……やがて、芽を出した。


「おっ……」


 手の平に感じた突起のような感触に、俺はゆっくりと手を離す。

 そこには芽があった……たったの一瞬で、発芽したのだ。


 す、すげー……流石さすが転生者の能力……だよな?【豊穣ほうじょう】って。

 いつの間にか使えるようになってて、頭の中に浮かんで来たんだよ、びっくりした。

 でも、どうやら赤ちゃんの頃から発動だけはしてたっぽいし……基準がわかんねぇよな、誰か説明役が欲しい所だ。


「それって……芽だよね?」


「ああ……んで、ここから」


 俺はその出て来た芽をつぶさない様に、今度はおおい被せるように両手を被せて魔力を注ぐ。【豊穣ほうじょう】~【豊穣ほうじょう】~、と、心の中で名前を連呼して。


「なんだか、暖かいね……」


 ん?そうか?この部屋が?

 いや、確かになんか……俺も手がポカポカする。


「――ぅわっ!」


 手が光ってる!!

 暖かい光に包まれてるって言った方が分かりやすいかもしれんが、とにかく光ってるんだよ。

 薄緑……って感じの発光色だ。


「……びっくりした」


「――自分の魔法なのに知らなかったの?」


 痛い所を。


「う、うん……まあ」


 だって試す機会なかったし、仕方ないね。

 今まではコッソリ手を背中に隠してやってたりしたからさ……自分で発動の瞬間見たの、実は初めてなんだよ。


「でも、ホントに凄いね。芽がグングン伸びてるよ……どんな花が咲くのかなぁ」


「確かに、気にはなるけど……」


 でもこれ、この成長……どう見てもデカくなりそうなんだけど。

 やっぱり、果物くだものの種だったのか?木になるタイプのさ。


「どれくらい伸びるのかなぁ?」


「どうだろ。勝手に伸びるからな……」


 現在、芽は俺の足首ほどの高さだ。

 確かに勝手に伸びはする……でも、少し遅いだろうか。

 あまり時間は掛けたくないし、だったら……魔力をもう少し注いでみようかな。


「ほっ……っと!おおっ」


「わぁぁぁぁ!」


 二人して、急激に伸びる芽を見る。

 うおぉ……きゅ、急に伸びんのかよ!

 童話みたいだな……ジャックと豆の木。


「すっっご~~い!」


 凄いよなぁ。俺もそう思うよ、アイシア。

 グングン……グングン……グングン伸びる……なぁ、どこまで魔力注げばいい?分かんねぇや、止めどころ。

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