2-47【急成長する木1】



◇急成長する木1◇


 俺が作ったこの秘密基地は、たった今幼馴染にバレてしまったが、それまでは誰にもバレてはいない筈の場所だ。

 なにせ山肌の中だからな。【無限むげん】の能力で数値をいじった山の壁の中に、忍ぶように入り込んでいるんだ。


「さてと……」


 大きめの木のテーブルに、いくつもの植物の葉や種がある。

 ここ二年で、俺が能力を調べるために作った秘密基地には、様々なものがある。


 それこそ、さっきまでアイシアが座っていた椅子だ。

 アイシアは気付かないが、この世界には無いような木のデザインだ。

 まるでお洒落なカフェにあるようなものだな。ある訳ないよ、この村に。


 と言う事は当然、【無限むげん】で数値をいじって作ったものだ……って言うのは、もう想像できるだろ?

 元は、ただの木の枝だからな……この椅子。


「久しぶりに来たし、何をしようか」


「色々見たいなっ」


 アイシアは黙っててくれないか?

 これでも、俺は真剣なんだぞ?


 だがしかし、正直言って見せたい気持ちもあるな。

 アイシアが絶対に黙っててくれるのなら、見せてもいいかも知れない。


 だって魔法だからな、魔法。

 これはどこまでいっても、魔法で通すと決めたんだ。

 それに、クラウ姉さんだってそうだろ?【クラウソラス】を光の魔法だって言ってるし。


「じゃあ……そうだな、アイシアはどれがいい?」


 俺はアイシアに、テーブルに乗る様々な葉や種を見せて、手を広げて選ばせる。


「……選べばいいの?」


 俺がコクリとうなずくと、アイシアは口に指を当てながら、選び出す。


「え~っと。じゃあ……これにする!なにかの種だけど……何の種なの?」


「分かんないよ、落ちてたのを集めてきただけだからさ。知らないのもあるんだ」


 見た目は胡桃くるみのような、茶色い大きな種だ。

 今言った「落ちていた」と言うのは本当で、山の中で見つけたのだが、それらしい木は見つけていない。

 同じ種も見つかってないし、いったいどこから来たものだろうか?

 俺の予想では、鳥が落としたんじゃないかと思ってる。


 前世でもよく見たよ。陸地に魚が落ちてるの。

 それと同じでさ、竜巻が起きたとか、鳥がくわえたのを落としたとかさ……そんな感じだろうと予測したんだ。


「大きい種だね……お花かな?」


「う~ん。花の種って……こんなに大きいっけ?」


 そんなわけないよな。このサイズなら、どう考えても木のサイズだ。

 だって本当にデカいぞ?

 でも、どこかで見た事はある気がするんだよなぁ。

 桃の種とかに似てる気もする。どこだっただろ。


「それじゃ試してみようか……種だし、やっぱり土に植えた方がいいよな」


 俺はその大きな種を持って、少し先の広い所に植える。

 土壌どじょうすでに触りまくって、【豊穣ほうじょう】の効果でバフ済みだ。


「こんなもんかな」


 こぶし大の穴を作り、種を入れ……埋める。

 少し水をかけて……普通なら、これで長期間を待つんだろうが。

 俺はそんな時間を待ってはいられない。試したい事は……山ほどあるんだからなっ!!

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