2-44【直ぐにまた会いましょう!】+用語その3



◇直ぐにまた会いましょう!◇


 俺たちは畑から戻り、そのまま村の北口へ。

 その足でジルリーネさんが帰るんだ。

 ジルリーネさんは馬の手綱たづないて歩く。

 俺とミーティアさんは、少し後ろで並走だ。

 向かう場所は北側の村入口……初めにジルリーネさんが来た道だな。


「数日もすれば、直ぐに戻ってきますから……今度は馬車で、お迎えに上がりますね……お嬢様」


「うん。待っているわ……気を付けて、ジルリーネ」


「ジルリーネさん、お気を付けて……で、これをどうぞ」


 俺は、家から持って来た(勝手に)かごを渡す。

 中身は勿論もちろん、大量の野菜だ。


「――こ、これはっ……!!き、君は神かっ!?」


 はっはっは、言いすぎですって。

 まぁ、どこかのポンコツな女神よりは神かも知れないですけどね!


「どうぞ持って行ってください。是非ぜひ、ミーティアさんのお父さんに……」


「ミ、ミオくん」


 分かってますって。これも、スクルーズ家の為だ。

 勝手をしたのは父さんに怒られるかも知れないが、それでもやる価値は充分にあると、俺も思う。

 俺はミーティアさんの考えに賛成派なんだ。

 だから、俺はミーティアさんに笑いかけて言う。


「――商談が出来ればいいですね」


「う……うん!」


 いい笑顔だ。

 正直言って、ジルリーネさんが理解してくれた以上、もう国家問題なんかは関係ないだろうしな。

 だから、ミーティアさんはミーティアさんで動けばいいと思うんだよ。


 これで何のうれいも無く家に帰る事も出来るんだし、商人が何処どこの国の村から野菜を仕入れようが、国に実害はないだろうしな。

 だから、俺も俺で考えるよ――自分のやりたい事を……さ。





 朝だ。早朝も早朝で……俺は真っ先に起きた。

 今日は休校日、俺たちスクルーズ家にしたら連休だな。


「……ふあっ……ぁぁぁ~」


 大きな欠伸あくびをして、背を伸ばす。

 ググググ……っと、せまい四人部屋でり固まった身体をほぐす。


「い……ってて」


 関節が痛いんだよ……骨の節々ふしぶしだな。

 でもって、知ってるんだよな……この痛み。


 成長痛だよ、成長期さ。まぁ十二歳だしな、誰でも通る道だ。

 前世での俺は、十二歳の時はすでに174センチあったから、今世はかなり低いな。

 それでも一般的な標準身長よりは大きいけど、ミーティアさんやクラウ姉さんよりはまだ低いからな、どこまで成長するかな……俺。


「……行ってきます」


 超絶小声で姉と妹に挨拶あいさつをし、俺は部屋をそろりと出る。

 リビングに通り、両親の部屋に聞き耳を立てると、いびきが聞こえて来た。


「よし、寝てるな……つーかいびきうるせ。母さん良く隣で眠れるな……」


 全員が眠っている事を確認して、俺は家を出た。

 向かう先は、俺専用の畑……学校の裏山だ。




――――――――――――――――――――――――――――――

・【澪から始まる】用語その3

 【豊穣ほうじょう】。正式名称不明のミオの二つ目の能力。

 自然発生型の能力であり、ミオはいつの間にか覚えていた。

 効能は、ミオの触れた物や視認した物の栄養価などを異常に高めるというもの。土ならば肥料をふくんだような最高級の土壌どじょうに変わり、草木なら成長スピードが物凄く早くなる。強制成長、が正しい表現だろう。

 更には、【豊穣ほうじょう】が発動した土壌どじょうで育った野菜は、自然(水害や寒波、暑さ)や環境に影響されなくなり、季節に関係なく強い作物が育つようになる。

 環境に左右されないと言う事は、どんな物も育つという事であり、本来、旬でない季節には育たないような物も、高品質で収穫できている。

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