2-34【自由騎士団リューズ1】



◇自由騎士団リューズ1◇


「――いいよ。入ってミオくん、そっちの子もね……」


 ミラージュさんが玄関から顔を出して、俺とミーティアさんに言う。


「はい」

「……」


 中に入ると、村長、父さん、クラウ姉さん。

 レイン姉さんに連れられてきたジュンさん、リディオルフさんと、そしてもう一人。

 長い銀髪を後ろでまとめた、鎧を身にまとった女性がいた。


「……」

(どう見ても騎士だな……)


 その通りだ、どこからどう見ても騎士。

 銀色の鎧に、腰にはさやに帯刀されたサーベル。

 兜はないが、サークレットを身に着けていて、首から下はガチガチの鎧だ。

 そして、サラサラの銀髪と……とがった耳。


 ん……?尖った耳・・・・……?とがってる!!

 こ、こ、これは……ま、まさか……!!

 伝説の……エ、エ――エルフ!?

 エルフマジ!?この世界エルフいたのかよ!?人間だけじゃなかったんだ!

 そう言えば、この世界……剣と魔法のファンタジー世界だった!魔王とかいるんだった!!

 このスローライフな十二年で完全に忘れてたし、ノーマークだったよっ!!


「――ジ、ジルリーネ……」


「……え?」


 ミーティアさん?

 まさか……知り合いか?


「――お嬢様っ!!」


 うおっ……何と言う美声。めっちゃ部屋にひびいた。

 しかも動き速ぇぇえ!あっと言う間にミーティアさんのとこまで到達したんだが……俺には、一歩を踏み出しただけにしか見えなかったけど。


「ああ、お嬢様……よくぞご無事で」


「うん。ありがとう……やっぱり、あなたが来てくれたんだね」


 ミーティアさん、涙目だ。

 やっぱり嬉しいんだろう、しかも知り合いが迎えに来てくれただなんて。

 ああそうか……あの馬、そもそもこのエルフさんのだって知ってたんだな。


「よかった……まずは一安心です。村長殿の言った通りでした……改めて、先ほどは失礼しました……」


 ジルリーネと呼ばれたエルフの騎士は、村長に向けて頭を下げる。


 おいおい。俺が来る前になにがあったんだよ!?

 この部屋にいる誰かに聞こうと思い、見渡すと……一名の顔が目に入る。


「……ふん」


 俺と目を合わせて、そっぽを向く……クラウ姉さん――って!……ク、クラウ姉さん……その顔……まさか。

 一瞬で出てきた俺の予想を、ジルリーネと言う女騎士はあっさりと正解させてしまう。


「――ああしかし、クラウ殿ほど強い戦士がいるのだ……奴隷どれいを返せなどと、決めつけたようなことを言って……本当に申し訳なかったと思う。この通りだ」


 全体的に頭を下げるジルリーネさん。

 やっぱり……戦ったんだなあんた!クラウ姉さんと!


 あ、いや……でもそのおかげで、事なきを得た……のか?

 これじゃあクラウ姉さんを悪くは言えないが。


 あれ?ちょっと待て……?

 クラウ姉さんと戦って……この人、平気だったのか!?





「改めて自己紹介をさせて頂く、わたしは【リューズ騎士団】所属、自由騎士……ジルリーネ・ランドグリーズと申します」


 ランドグリーズ……ゲーム知識だが、ヴァルキリーの一人……だったか?

 まさかヴァルキリー本人って事は無いよな?

 だってエルフだしな……それにしても、エルフか……いいもんだな。

 前世でも考えた事はある。空想上の種族、美のエルフ……こうして出会う事も出来るんだな、異世界。

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