2-33【兵士って言うか……騎士!?】



◇兵士って言うか……騎士!?◇


 幼馴染ガルスの話を聞くに……【リードンセルク王国】の兵士が、奴隷どれいを返せとやって来た。

 そう聞いて、ミーティアさんの顔も青くなっていた。

 気付いたかい?そうだ……【リードンセルク王国】側は、この村に疑惑を掛けているんだよ。


「その兵士は……?」


「村長の家だよ……皆集まってるっ!ミオも来てくれっ」


 当たり前だ。行くに決まってる。

 ミーティアさんもいるしな。


「分かった……行きましょう、ミーティアさん」


「……」


「大丈夫ですよ。これで皆さん国に帰れます……それなら、あの話もできますね」


 心配させない様に、笑顔で言う。

 しかし……事は重大だ、内心では笑っている場合ではない。


 もしも軍隊で来ていたとしたら、こんな村……制圧なんて簡単だろう。

 奴隷どれいを返せと言うからには、この前まで戦っていた【テゲル】の兵士と……この村を同一視している可能性がある。

 そればかりは、村長が否定するだろうが……心配だ。





 俺たち三人が村長宅まで来ると。


「――っと……ミラージュさん!?」


 玄関の前で、ボーイッシュでスポーティーな女性が立っていた。

 ミラージュ・ライソーン。レイン姉さんの同級生で、ちょっと男勝りな十七歳だ。


「ん?おぉミオくん……来たね。待ってたよ……その子が最後の一人かな?」


「あ……はいっ」


 なるほど……残りの二人は既に中にいるのか。

 つまり、最悪な事態にはなっていないと考えるのが妥当だとうだな。

 それだけでも重畳ちょうじょうだって。


「中は……少し待った方がいいかな、ちょっと待ってて」


 ミラージュさんはそう言い、中に入って行く。

 俺はミーティアさんを見たが、実に優れない顔色をしていた。


「大丈夫ですよ、兵士の人も……説明すれば分かってくれます」

(多分な……話が通じればだけど)


「だと……いいんだけど」


 ミーティアさんは、村長宅近くに待機している馬を見ていた。


 おお……馬だ。久しぶりに見たな。

 基本的に商人が村に来た時じゃないと見れなかったからな。

 でも、なんでその馬を見るんだ?


 真似まねをするように、俺もその馬を観察かんさつする。

 競走馬もびっくりの肉質だ……ん、表現変か?


 ともかく、凄い馬だよ。

 後は、くらに何か掛けられてるな……あれは、はたか?

 国旗って事はないだろうけど……なんだろうな。

 がらは……剣と槍に見えるけど。


 ああ。俺もさ、その時点で嫌な予感したんだよ。

 はたに剣、そして槍だ……可能性としては充分にある。

 しかもこの馬は、鎧を身に着けている……武装をしてるんだ。

 もうさ、軍だよな……これは、軍旗ぐんきだ。


「まさか……騎士なのか?」


 俺の独り言のような問いに、ミーティアさんが。


「はい。おそらく、【リューズ騎士団】かと……」


 【リューズ騎士団】……騎士か。

 他国の騎士が、奴隷どれいを返せと言って村長宅にいる。

 このミーティアさんの申し訳なさそうな顔は、いったいどういう意味なんだ?

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