2-35【自由騎士団リューズ2】



◇自由騎士団リューズ2◇


 俺とミーティアさんが来る前に、どうやらクラウ姉さんはこのエルフの女騎士、ジルリーネ・ランドグリーズって人と戦ったらしい。

 そして、だ……当然、クラウ姉さんが器用に手加減できるとは思えない。

 それはつまり……このジルリーネって人は――強いんだ。

 今も笑顔でミーティアさんと会話を出来るくらいには、余裕よゆうがあるのだろう。


 それにしても、マジでいざこざになったらどうしようかとは思ってたが……まさか俺が来る前にもうなっていたとはな。

 俺、その時に居なくてよかったのかな?これは。


 それにしても、クラウ姉さんの顔よ……あれは相当不機嫌だぞ。

 げっ!……目が合った……死ぬ。


「……ゴホン。ランドグリーズ殿、貴殿は……【リードンセルク王国】の騎士……なのですかな?」


 おぉ村長……もしかして、これが最後の仕事になるのではないか?

 ん?……こらこら。隣のオヤジ殿も、若干安心したような顔してるなぁ。

 まぁ確かに、村長になって早々……村に騎士が押しかけてきたら、村民も嫌だろうしな。


「いえ……これはわたしの独断なのです」


 ど、独断!?国の騎士が?

 規律きりつやらなんたらがどうたらとか言いそうなのに……独断!?

 この人、単独でミーティアさんを探していたって事か?

 それなら軍旗ぐんきなんて持ってくんなよ!!まぎらわしいだろうが!


「わたしは騎士であると共に、このミーティアお嬢様の護衛ガードをしておりました」


 ガードね……ボディガードって事か?

 なら余計に、独断ってのはマズくないか?


 俺はちらりとミーティアさんを見る。

 エルフ騎士の隣で、申し訳なさそうにするミーティアさん。

 う~ん……どうしたもんかな。


「……お嬢様がさらわれた時、わたしが離れてしまったせいで……こんな目にわせてしまったのです……ですが、この様に丁重に対応して頂き、本当に感謝します」


 そのわりにはクラウ姉さんと戦ったんだよな?

 もしかして直情型ちょくじょうがたか?


「わたしが単独なのは……わたしが所属する騎士団【リューズ騎士団】が……自由騎士だからです」


 あぁそう言えば、自由騎士って言ってたな。

 普通の騎士と、なにがどう違うんだ?


「――それは普通の騎士と、どう違うのですかな……?」


 おお!村長らしい事を。

 ルドルフ父さんだったら、この様にして聞けていただろうか。


「はい。自由騎士とは……その権限けんげん、行動理念を……個人の自由に任せる……と言う称号を得た人物たちの事です。正式には国に所属せず、その者がきたい場所で自由に仕事をする事ができる……それが、自由騎士なのです」


 フリーランスじゃねぇか。

 つまりこのエルフの騎士さんは、自由の名の下に行動をして、単独でミーティアさんを助けに来たって事か……?


 あ、いや……まてよ?それってつまり……おいおい。


「――国は、動かなかったと言う事なのね……」


 俺と同じ考えだったらしいミーティアさんが、分かっていたかのように言う。

 しかし、もう二人……ジュンさんとリディオルフさんはショックを受けていそうだ。


 だがしかし、そう言う……事なんだろうな。

 このエルフ騎士さんが、その時には国に伝えている筈だしな。

 国民がさらわれた事を。奴隷どれいとされた事をさ。

 だけど、それでも動かなかったという事なんだ……ミーティアさんたちの祖国、【リードンセルク王国】は。

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