2-30【ミーティアなりの考え】



◇ミーティアなりの考え◇


 私は……打算的ださんてきに考えているんだと思う。

 つい前日、私が言った事は……本当に突拍子とっぴょうしもなく、幼稚で我儘わがままの過ぎた言葉だった。

 咄嗟とっさとは言え、「ここに置いてください」など、よくもまぁ簡単に言えたものだと、我ながらにも思う。


 でも……意志は変わらない、そう思っているわ……今でも。

 だから、こうして何か……自分の未来に繋がる何か・・がないかと、手繰たぐり寄せようとしているのだから。


「……す、凄い」


 本当に凄かった。

 田舎ならではの広大な土地。新鮮な空気に栄養のある土壌どじょう

 全てにおいて、野菜を育てるのに適していた。


 私が住む【リードンセルク王国】の街――【ステラダ】でも、こうは行かない。

 確かに畑はあるし、酪農らくのう栽培さいばいは盛んだ。

 それこそ【テゲル】の兵士が私たち【ステラダ】の民をさらったのは、【ステラダ】に大量の食糧があり、それをうばって国に帰る為だったのだろう。

 ついでにさらわれたと言うのは腹立たしい事だけど、これを見れば一目瞭然いちもくりょうぜんだ。


 【ステラダ】は、この村と提携ていけいした方がいい。

 実際、食べた私だから言える。この村の野菜は絶対に美味しい。それは絶対だ。

 更には生産量ね、この広大な畑を見れば分かる。

 手の行き届いてない場所などない、管理もしっかりとされている畑。

 被害をもたらす害獣がいじゅうすら出ない安全な土地。

 最高の立地条件だ。


「そんなに見入って……お気に召してくれたようでよかったです」


 はっ――そ、そんなに見入っていたかしら。

 私は、彼の気まずそうな笑顔に……こう返す。


「うん、とても勉強になる、素晴らしい畑ね……」


 何故なぜそんな事を返答したのだろう。

 これでは、私が農作業にしか興味きょうみが無いみたいじゃない。

 違うのに……全然違うのに。


「これなら、あっと言う間に年間の収穫量がおぎなえる……本当にすごいわ」


 違うの、言いたいことはそうじゃなくて。

 いえ……畑をめたい気持ちも勿論もちろんあるわ。

 だって、こんなに素晴らしい畑だもの。


 でも……私が言いたい事、それは。

 私……ミーティア・クロスヴァーデンにしか出来ない、橋を掛ける事なのだ。


「確かに、年間の収穫量も増えてますね。隣町……と言っても、歩きで十日以上かかる場所にあるんですけど……そこにおろしている量も増えてますし、買取の価格も……ありがたいことに高価になってますよ」


 やっぱり!それなら……きっと【ステラダ】でも売れる!

 だったら私は……【ステラダ】と、この村の……事業を作れる。

 ミオくんに利益りえきを確保する事ができるかも知れない。

 曲がりなりにも、私は商人の娘だ。損得勘定そんとくかんじょうで動くのが商人だと父もよく言っていた。

 商人視点で言えば、こんなにも利益りえきの生まれそうな宝の山だ。大商人と言われる父が、目を光らせない訳がないのだから……

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