2-25【スクルーズ家の一大決心】



◇スクルーズ家の一大決心◇


 朝早くから、ルドルフ父さんに叩き起こされた……文字通り、叩き起こされたんだよちくしょー。

 理由としては、昨日俺をしかれなかったからだそうだ。

 母さんに怒られたんだから、別途べっとで怒る事ないだろ……もうさぁ。


 それでも、父さんは何故なぜか急に生き生きとしていたよ。

 まぁ……決心がついたんだろうな。安心していいのやら……だよまったく。


 それでも、スクルーズ家の大黒柱だいこくばしらの決心だ、ガキどもは何も言わずにしたが……えんのかなぁ?





 父ルドルフを中心に、リビングで集まるスクルーズ家の面々。

 おっと、クラウ姉さんは不満そうだな。さては俺と同じ起こされ方をしたな……?

 レイン姉さんはもうバッチリ起きてて、朝食の準備をする母さんを手伝っている。

 この後はまた集会所に行くのだろう。

 わざわざ話をする為に小屋から戻って来たんだからな。

 コハクは……まだお眠だな。仕方がない。

 小二小三の頃って、朝起きれなかったもんな、俺だけじゃないはずだ……だろ?


「よし、皆集まったな……」


「コハクが寝てますー」


 ク、クラウ姉さん、もういいだろ?

 そんなにねんなって。俺も拳骨げんこつ貰ったんだからさ。


「コハクはいいじゃないか、姉さん……」


 転生者だとしても、クラウ姉さんは十五歳だ。

 俺もそうだけど、前世の精神が引っ張られるんだよな。

 考え方はしっかり大人を保ってるけど、どうも性格が子供っぽくなるんだ。


 赤子からやり直した弊害へいがいからか、二重人格みたいなさ?

 それとも、もしかしてクラウ姉さんロールプレイしてる?


 うっせ。俺はそうだよ。

 未だに、初期キャラメイクの成功したアカウントみたいな気分で生活してんだよ。


「……聞いてくれ皆。父さんは……村長になる事にした」


「「「……」」」


 やっぱりそうか。まぁそうだよな……こんな朝早くから叩き起こされたんだ、そうだろうと思ったよ。


「お父さん。村長さんに頭下げられたのよ?」


 そこまで?なんで父さんなんだ?


スクルーズ家うちが村一番の稼ぎ頭なのは、お前たちも分かるだろう?」


「……うん」

「……ええ」

「……まぁ」


 確かにな。【スクルーズロクッサ農園】の野菜は、商人さんが高価買取してくれて、様々な町(近隣)に出荷されてるよ。畑も、俺の能力――【豊穣ほうじょう】でうるおってるしなぁ。


 でも、それがなんで村長?


「今の村長は……町に引っ越すんだそうだ。もうお年だしな……息子夫婦が、帝国内の遠くの町で暮らしていて、一緒に住まないかと言ってくれたらしい」


 む、息子夫婦って、オイシイ……じゃなくてオイジーか?

 あいつ、母さんに言い寄っておきながら別の町で結婚してやがんのかよ!!


 マジかよ……あいつ。

 村長も、大変だなぁ。


「……苦渋くじゅうの決断だが、行くことにしたそうだよ。やはり年齢を考えると、一人では辛いんだろう」


 それで……村で一番稼いでいるスクルーズ家の長に依頼って事か。

 ご高齢に加えて、奥さんも随分ずいぶん前に亡くされているし、息子夫婦から頼まれた……あ。これは孫かな?


「近く、お孫さんも産まれるそうでな……」


 はい正解。だろうなと思ったよ。

 まぁ、あれから十年以上ってんだもんな。

 オイジー・ドントー……あいつも、成長したって事なのだろうか。

 母さんに言い寄ったことは忘れねぇけど、せめていい親にはなってくれよ。

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