2-23【まさかの言葉】



◇まさかの言葉◇


 ミーティアさんの言葉には、正直言ってかなりおどろいたよ。

 まさか、「ここに置いてくれ」……なんて言うとは思わなかった。

 だってこんなにも田舎なんだぞ?絶対に、自分から進んでくるような場所じゃないんだって。


 それこそ日本のような、古き良き田舎じゃない。

 マジで何もない、気の狂ったように時間の緩やかな場所なんだ。

 住めば都とは言うけどさ……ミーティアさんって、見たところ育ちがいいんじゃないか?


 【リードンセルク王国】出身だったよな。

 どれほどの規模の国なのか、俺はよく知らないけどさ。

 少なくとも、この村よりはさかえた所だろう。

 その国のどこの町?かもまだ聞いてないけどさ……さらわれてここまで来たって事は、少なくともこの村……【サディオーラス帝国】の国境近くだろうと想像できる。

 もしかしたら、帝国領の近隣の町よりも近い可能性があるから、怖い所だな。




 そして、ミーティアさんのまさかの言葉から、一日がった。

 本当にまさかの言葉だったので、直ぐに村長に報告させてもらったよ。

 しかしまぁ、俺等は俺等で、また色々話が出来ててさ……もうそれどころじゃなかったんだ。


 とりあえず、ミーティアさんのそのお願いは、保留にしてもらった。

 俺が直接申し出て、彼女も納得なっとくしてくれた。


 え?何で俺かって?……いや、俺も知らない。

 レイン姉さんがさ、ミオが言いなさいって言うから……そうしたまでだよ。


 そしてだ。その“俺等の問題”と言うのが……

 そう、俺等・・だ……スクルーズ家のお話しなんだ。





 事の発端ほったんは、村長の所に父さんが居た事だ。

 父さんは村長に呼ばれてその場にいたのだが、その場に居合わせたクラウ姉さんが……俺とレイン姉さん、妹のコハクに教えてくれた。


「……そ、村長?」


「そう、村長」


「……お父さんが?」


「そう、パパが」


「パパすごいの?」


「そう……なのかな?」


 そこはうなずいてやってよ。

 クラウ姉さんの話を率直そっちょくに申し上げてしまうと、父さんこと……スクルーズ家の大黒柱、ルドルフは、次の村長にならないかと打診されたのだ。


あの・・父さんを……村長にぃ?」


 俺の印象から出た言葉だった。何故なぜだろうな……家族思い、妻思い子思いなのは認めよう。

 だが、人が良くだまされやすい。未だに借金返済中のうだつの上がらないおじさんだぞ。

 そんな男を村長に?意味が分からない。whyホワイ


「……私もおどろいた。正座させられたまま聞いてたけど、パパも乗り気だったわよ」


 いや、だからなんでなんだよ。

 理由……理由か……なんだろうな。

 俺は考える、考えるが……分からん。


「お父さん、まだ村長に借金返してるのよね?」


「多分ね」


 そうだ。その借金は、俺が産まれた頃からある大きな借金だ。

 息子はともかく村長はいい人で、利子もなくゆったりと返しているらしいが。


「う~ん」


 そう言えばもう十年以上だぞ?そろそろ本格的に返さないとマズくないか?

 ま、まさか……その借金がどうたらとか言って……村長になる?

 いやいや……それこそ意味わかんねぇよな。


「「「「はぁ~……」」」」


 俺たちスクルーズの子供たちは総じて、意味の分からない展開に……ため息をくしかなかったのだった。

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