2-11【クラウ姉さんの本気4】



◇クラウ姉さんの本気4◇


 あらあら……何が起きたか分かっていないって顔をしているわね。

 兵士たちは、倒れる仲間を見て「?」と疑問符ぎもんふを浮かべていた。


「――そこに仲間が居たんでしょ?斬っただけよ?」


 もしかして、木に向かって剣を振るった馬鹿な娘……だと思われたかもしれない。


「ふざけているのか、娘……貴様がその様な態度を取るのなら、こちらも相応の対応をさせて頂く……抜剣!!」


 ジャキジャキッ――と、一斉に兵士たちが剣を抜いた。

 なるほど、これがミオの言う軍の行動か。


 でも残り十四人。正直……【クラウソラス】の威力を上げて回転斬りをすれば、一瞬で終わるわね……でも、それじゃあつまらない。


「なら、遊んでくださる……?兵隊さんっ!!」


 先手必勝。返答を待つほど、私はこいつらに興味きょうみがない。


「なにっ……!!さ、散開っ!!」


 遅いのよ。動きがトロイ。

 本当に軍人なの?地球の軍隊の方が絶対早いよ。


「――ほっ」


 剣を持った一人の腕を目掛けて、【クラウソラス】を振るう。

 試してみたかった。心臓や頭を狙えば、精神や神経に激痛を与える【クラウソラス】だけれど、急所じゃなければどうなるのか。流石さすがに村の男で試すわけにはいかなかったから、丁度ちょうどいい。


「なっ……ぐぅああっ!!腕がぁっ!」


 兵士はいとも簡単に剣を落とした。

 ビクビクと腕を痙攣けいれんさせて、しびれているのだろうか。

 しかし、兵士は逆の腕で落ちた剣を拾おうとした――だから。


「はい」


 剣に伸びた手の甲に、【クラウソラス】を突き刺してみた。

 刺し続けるとどうなるかも、気になるじゃない?


「――うがぁぁぁぁぁあっぁぁぁ!!」


 おお、生きたまま解剖したかえるのようにビクビクするじゃない。

 なるほど。これは面白い。


「貴様ぁ!!」


 おっと、他の兵士が。

 私は跳躍ちょうやくで兵士の攻撃をけ、けざまに兵士の両足をいだ。


「――ぐおっ……おおおっ!!」


 感覚がなくなったのか、斬られた兵士は糸の切れた人形のように、顔から地面にキスしていった。おめでとう。


「ちっ!なんなんだあの剣はっ!!」

「た、隊長!ドーンが倒れてますっ!!」


 ああ、木の後ろの?

 さっき見てたんじゃなかったの?もしかして気付いてなかった?


「――うおぉぉぉぉぉ!!【テゲル】の兵を舐めるなぁぁぁ!!」


 別に舐めてないわよ、相手にしてないだけ。


「……おそっ」


 首を狙った横斬りをしゃがんでけ、そのまま兵士の腕を斬る。

 先程の兵士のように、腕を痙攣けいれんさせて剣を落とす。

 そして続けざまに、太腿ふとももを斬った。


 監察医として残念?なのは、斬った感覚がない事だ。

 いえ別に、率先して斬りたいわけではないわよ?マッドだと思われるからやめて。

 でも……血も出ない、斬った実感もないのだと、異世界って感じがしないのよね。

 よく言ってVRのゲームみたいな感じかしらね。やった事はないけれど。

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