2-2【幼馴染も可愛いよ】



◇幼馴染も可愛いよ◇


 俺は夕方の村を、一人でトボトボと……あ、いやごめん。

 相変わらず一人じゃないんだった。隣には幼馴染、アイシア・ロクッサがウッキウキで歩いている。


 どうやら、俺とデートしているつもりらしい。

 俺から言わせれば、してないはず……うん、してないしてない。


 俺は、さっきの能力の事を考えながら、ゆっくり歩いてる。


 ――【豊穣ほうじょう】。

 常時発動型の能力であり、その効果は自然干渉だ。

 特に、作物に影響えいきょうおよぼしている様なんだ。


 スクルーズの野菜が大好評だって、前に言っただろ?

 つまりはそう言う事だよ。【豊穣ほうじょう】の力は、俺が触れた土を高性能の肥料ひりょうふくまれたものに変える。

 俺が農作業を手伝う度に、畑はドンドンうるおっていくんだ。


 思い返せば、始まりは産まれた直ぐ後だった。

 初めて見に行った畑……そこで俺は土に触れた。

 その時点で、きっと【豊穣ほうじょう】が発動してたんだろうな。


 【豊穣ほうじょう】、正式名称は知らねぇのに、なんで発動してんだろうな。つーかさ、常時発動型だったら、もう少し異世界っぽいのが欲しかったよ。

 いや、作物さくもつが異常に育つのも充分に異世界だけどさ!


 そして、もう一つの能力は――【美貌びぼう】。

 これにいたっては、直接俺には関係ないっぽいんだよな。

 この【美貌びぼう】も【豊穣ほうじょう】と同じで常時発動型であり、その効果は……関係性の深い異性を美しくする。だ。


 あぁはいはい、レギンママンがどちゃくそ美人なのはそう言う事ね。

 レイン姉さんもクラウ姉さんもコハクも、もともと美形一家なうえに、美形補正までかけちゃってんのね、俺が。

 とか言っても、もし【美貌びぼう】が無くなっても、俺の家族は変わんねぇと思うけどな。


 その他にも……う~ん、これはまた後にするか。

 なんか隣でアイシアが凄く、一人で話している気がする。


「――ねぇってばぁ、聞いてるの……?」


「ん、なに?聞いてるよ……アイシア」


 ごめんな、聞いてなかったけどもさ。


うそだぁ……」


 ごめんって。

 そんな悲しそうにせんでも。


「ごめんごめんっ。はい!ほらもう一回、お願い!」


 俺は両手を合わせて、その手の横からアイシアをのぞく。

 茶目っ気出してみました!前世じゃ出来ねぇぇぇ!死んじまうわ!


 あ、もう死んでたわ……


「も、もうー……仕方ないんだから。ねぇほら、あそこ見てみて……?」


 アイシアが指差すのは、村に新しく出来た雑貨屋だった。


「あ~……あそこか……」


 なに?もしかして行きたいのか?


「……ねぇ、行ってみない?」


「え、まぁ別にいいけどさ……」


 アイシア、君、お金はあるのかい?

 俺は、何も買わないで店に入れないたちなんだ。

 なんか申し訳なくなっちゃうんだよな。だから、何か買う店にしか入らない。


「えっと……お小遣いは?」


「……え……な、ないけどさぁ……見るだけ?」


 ほら出たぁ……これだよまったく。


「もしくは……わたし、ミオからなにかプレゼントして欲しいなぁ、えへへ……」


 恥ずかしそうに身体をくねらせながら、そんな上目遣いやめてくれ。

 確かにめっちゃ可愛いんだが。

 しかしそんな仕草をされたら……何か買ってあげたくなってしまうじゃないか。

 俺は額に手を当てながらも、村の雑貨屋に……二人で向かうのだった。

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