2-3【雑貨屋出来たってよ!!】



◇雑貨屋出来たってよ!!◇


 この村に出来た最新の建物。

 それが、この雑貨屋――【トルタン】だ。

 経営者はこの村出身の商人の男性であり……二年前、盗賊のせいで村に来れなくなって困っていた商人さんだ。


「――お?やぁ……いらっしゃいミオ君。今日女の子と一緒かい?」


 ちょっ!おいおい、止めてくれよ。

 まるで俺が毎回違う女の子と来ているみたいじゃないか。

 ほらぁ!後ろの幼馴染が怖い顔してるから。


「やめてくださいよディンさん、この前のあれは姉と妹ですって……と言うか、クラウ姉さんの事は知っているじゃないですか」


「はっはっは……そうだったな。冗談だよ、冗談」


 この人の名はディン・トルタン。

 あの日の一ヶ月後、この村にまた来られるようになったと聞いておとずれたディンさんは、盗賊を退治したのが子供二人だと聞いて、スクルーズ家にお礼に来た。

 だから、俺とクラウ姉さんはこの人を知っているんだ。


 なのに、なーんでこの人は誤解を招くようなこと言うかなぁ。

 あ、でもよかった。俺の弁明べんめいがアイシアに効いてるようだ。


「わ、私、アイシアですっ。このミオの……かの――幼馴染です!」


 俺の聞き間違いか?

 ねぇアイシアさん。今彼女って言おうとした?


「はははっ、どうもお嬢さん……僕はディンだよ、この店の店主さっ」


 この人もさ……よくこんなド田舎に店建てようと思ったよな。


「――ミオ君。今失礼な事を考えたね?」


「ははは、まさか~」


 するどい。流石さすがあきないのプロ。


「――わぁ……可愛い!」


 俺がディンさんと攻防をしていると、アイシアが一人で店内を回り始めていた。


「あ……ディンさん、見せて貰いますね」


「あいよ。ゆっくりしていきな」


 アイシアの赤い瞳がキラキラとしている。

 やっぱり、こう言う所は女の子だな。


「これ綺麗!」


 どれどれ……おお、これは確かに綺麗だ。

 でも……なにこれ?さっぱり分からんが。


 見た目は完全な四角形だ。それにしても、色が綺麗だな。

 一見サイコロかとも思ったけど、どこにも数を表すものがないから違うよな。


「ねぇミオ、えっとね……」


 あ~はいはい。これが欲しいのね。

 いいさこれくらい、多分安いでしょ。


「分かった。いいよ、プレゼントしてあげる。ディンさんこれください」


 俺はさわやかな笑顔で言う。

 ふふふ、たまにはカッコつけさせてくれよ。


「い、いいのかい?」


「……え?」


 あれ?なんでそんなに引いてんの?口端ヒクヒクしてますけど。

 だってこれ、こんな小さいんだぜ?指でつまめるキューブだぜ?


「ええ。いいですよ……ください、いくらですか?」


「……えっとだな――」


「は……?」


 俺は布鞄ぬのかばんから財布を取りだそうとする。

 そして、ディンさんが値段を口にしたのと同じタイミングで……俺は、ピタリと固まっちまった。

 いやいや……そんな値段すんの?こんなに小さなキューブがさ……

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