1-62【これはみんなを守るため】



◇これはみんなを守るため◇


 涙目で俺の前に立ちふさがる、最愛の姉……レイン姉さん。

 分かるさ……心配してくれてる事くらい、それでも……俺が行かなくちゃいけないんだ。


「レイン姉さん……聞いて?」


「や、やだよ……聞きたくないわっ!」


「お姉ちゃん、ミオは――」


「クラウ姉さん。ここは僕が」


 俺は、前に出ようとしたクラウ姉さんを制して、レイン姉さんに優しく話しかける。

 そうだ。この人には強引な手を使っちゃいけない。

 優しくて、清楚せいそで、綺麗で。頭が良くて、将来が楽しみなナイスバディ――っと、それは今関係ないな。


「レイン姉さん……僕は、ガルスを助けたい。クラウ姉さんが言った通り、きっとまだ無事なはずなんだ。盗賊が行動をするのは深夜だって思うし、今がその最後のチャンス……好機こうきなんだよ」


「……」


 俺は続ける。


「でも、それだけじゃないよ。僕は……みんな・・・を守りたいんだ!」


「みんな……?」


 そう、みんなだ。

 勿論もちろん、幼馴染のガルスを助けたいってのはある。当たり前だよ。

 でも、それ以外の懸念けねん……その後の話だ。


「盗賊たちの狙いは、村の物資だけじゃないって事よ」


 クラウ姉さんが言う。

 そう。その通りだ。


「うん。クラウ姉さんの言う通りだよ。この村には、そこまで高価なものがある訳じゃない、お金なんてもっての他でしょ?」


「……うん」


「じゃあ……何もない村で、腹の立てた盗賊は何を狙う?」


 あ……やべ、これはレイン姉さんに言わせちゃ駄目だめだったかもしれん。


「何って……えっと……」


 あ、これは分からないパターンか?自分の価値を分かってないパターンだわ。

 そんなレイン姉さんにしびれを切らせて、クラウ姉さんが代わりに応えた……ド直球で。


「女に決まってるでしょ……」


 あ~あ、言っちゃったよ、しかも堂々と。


「――え!?」


 本気で分かってねぇな。

 なら分からせるしかねぇか。


「そ、そうだよ……クラウ姉さんの言う通り。家族贔屓かぞくびいきって思われるかもしれないけど、レイン姉さんもクラウ姉さんも、レギン母さんも……その……み、みんな……き、き、き……れれれれ……」


「……?」


 あれ、なに?言葉が出ないんですけど!呂律ろれつがおかしいんですけど!

 あぁやめてレイン姉さん……そんな変なものを見る目で見ないで!


「ミオ、顔真っ赤。慣れないことするからよ?」


 う、うるさいな!そうだよ言った事ねぇよ!女性に可愛いとか綺麗だとかさぁ!!

 素が出ちまったよこんちくしょうぉぉぉぉ!!


「でも、レインお姉ちゃん……わかったでしょ、ミオの言いたい事。十五なんだから、それなりに知っているでしょ?」


「――っ!!」


 途端とたんに真っ赤になるレイン姉さん。

 よかった、気付いてくれたみたいだ……ん?よかったのか?

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