1-57【好奇心の危うさ】
◇
その日の夜……俺はスクルーズの
レベル的には小二くらいだな。正直言って全部分かる。
この村の学業レベルは本っ当に低いのだ、きっと日本では考えられないだろう。
「――わかった!」
最初から分かってたんだけどね。
俺は知らない振りをして、レイン姉さんに教えてもらっている。
「そうだよっ!偉いねぇミオ~」
頭なでなで……優しいもんだな、レイン姉さん。
「えへへ、姉さんの教え方がいいからだよ!」
それに、可愛いしな。
「ねぇ、レインお姉ちゃん……私もミオに教えたいんだけど……」
「えぇ~、クラウは
俺も
「……むぅ、じゃあいい」
クラウ姉さんは素直に
その本って、たしか大分前に隣町から来た商人から買った本だよな……あれ?そう言えば、今月は商人が村に来てなくないか?
あ!もしかして……学校でガルスが言ってた、盗賊が関係してるのか?
「あれ?……誰か来たみたい、お客様かしら……?」
「え?あ、本当だ。話が聞こえるね」
誰だ?こんな夜に。
俺たち
そこには、文字通りお客様がいた。
「――ああ、ミオくん!」
「あ、ガルスの……お母さん」
その客人は、幼馴染ガルスの母親……カレテュ・レダンさんだった。
普通なら、近所の知人が
カレテュさんは非常に青い顔をして、父さんと母さんと話をしていた。
「えっと……」
あぁもう、嫌な予感しかしない。
ドクンドクンと鳴る心臓が、それをもう予期していたのかもしれないな……
◇
静かになった室内で、テーブルについたのはガルスの母カレテュ・レダン。
そして父さんと母さん……最後に、俺だ。
二人の姉は、俺の後ろで待機していた。
空気は重い。
事の重大さが、嫌でも
「――そうですか、ガルスくんが……」
聞いた話はこうだ。
今日の夕方、家に帰って来たガルスは、一人コソコソと何か準備をしていたと言う。まるで誰にも見られないよう、こっそりと隠れる様に。
そしてしばらくして、そのガルスがいなくなったのだと。
初めは、外に遊びに出たのだと思い、気にはしなかったのと言う。
しかし、夕食の時間になってもガルスは帰ってこなかった。
カレテュが部屋に行って見ると、一枚の紙が置いてあった。
そこには「村の外に出る」と……「盗賊を見てくる」と書いてあったと、カレテュは言う。
そこで、まずは同級生である俺に話を聞こうと、スクルーズ家に
「そういう事なの……ミオくん、何か……息子の事、分からない?」
正直、心当たりはある……でも、それを言っていいものか?
俺がもしガルスに賛同していたら、きっと俺も帰って来ていないだろう。
――いや……そうじゃない。
俺の知っていることは何でも話そう。
それがきっと、一番答えに近道なはずだ。
「今日のお昼休み、ガルスとその話をしました。でも……」
俺は本当の事を話す。
「――盗賊の話をしたのは確かにそうです、でも……大人に任せようって言ったんですけど」
「――そうね、それが普通よ。ミオは間違ってない」
クラウ姉さんが同意してくれる。
「でもまさか……ガルスが一人で行ってしまうなんて思ってもみませんでした」
俺は、本当に
引き
あの時
俺が同意していてもしていなくても、一人でもだ。
だが……それを今言っても、もう遅いのだから。
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