1-53【恥ずかしぃぃぃ!!】



◇恥ずかしぃぃぃ!!◇


 このひと、レイン姉さんと結婚するんじゃないの?

 俺の中で、急激に熱が冷めていく。


 いや、本当はもう気付いてる……やってしまったんだ、俺が。


 アドル……さんの話を聞くうちに、どんどん繋がっていくんだ。


「この前お邪魔じゃました時……親父の事を相談させてもらったんだ」


 この前来たのは知ってるよ。だから、今回も警戒したんだろ?


「それで相談したら、ここで働かないかって言って貰えたんだ。それで、是非ぜひよろしくお願いしますって……挨拶あいさつに来たんだよ」


 で?俺には婿むこに入ってよろしくお願いしますって聞こえたんだが?

 悪いね……往生際が悪くて、既に俺の大敗が決まっていてもさ……分かるだろ?


「あーそうか、もしかして、全部聞いてたのかな……」


「そ、そうかも、ごめんね……」


 レイン姉さんが謝らなくてもいいだろ。


「なんにせよ、俺は君のお姉さんを取ったりしないよ……さっきルドルフさんが言った家族になるっていうのは」


 そう、それだ。

 でも、もう俺も分かってる……恥ずかしいから言わないでくださいお願いします。


「――従業員って意味だしね」


 いやいや……あのさ、普通そんなこと言う?

 俺はクラウ姉さんに怒りを抑えられたまま、顔だけを両親に向ける。

 すると二人は。


「そうね。そう言う事よ……?」

「ああ、大切な従業員かぞくさ」


 ええぇ~、なにそれ……俺の意気込みは?

 ちょっとさ、え?なにやめない?その生温かい視線。


「レイン、君の弟は家族思いの……とってもいい子だな」


「ええ。ありがとう」


 え、え……ごめん、ちょっと今すぐここからいなくなりたいんだけど。

 クラウ姉さん離してくれないですか?

 アイシアもさ、なんかお前まで家族の一員みたいになってるけど……もしかしてお前知ってたのか?クラウ姉さんも?

 なんかこの人の事調べた、みたいなさぁ、言ってたよな?


「――じゃ、じゃあ……その、僕の」


 早とちりですよねぇぇぇぇ!!


「そうね。ミオの勘違かんちがいよ……?」


「――は」


 恥ずかしぃぃぃぃぃぃぃ!!声にはかろうじて出なかったけど、多分顔は真っ赤だ。

 逃亡したい。顔を見られたくないっす!

 あ、クラウ姉さんやめて……顔を固定しないで。


「ミオ。私に抵抗したでしょ……後でひどいよ?」


「――ひっ」


 耳元で恐ろしい事を言わないでっ!

 クラウ姉さんも分かってたなら説明してくれよ……無駄に恥ずかしいだろ!

 やけに冷静だと思ったよ、今思えばさ!


 俺が羞恥しゅうちに耐え忍んでいると、誤解を招くような発言をしたオヤジ殿が。


「さて、話も終わりにして……畑を案内しよう。今日から作ってもらうって言っただろう?」


「あ、はい!!」


 もう分かってたよ!!作るって野菜な!なんなんだよそのオチ!!

 読めなかったの俺だけ!?なぁ、俺だけか!?

 俺が全部悪いのかぁぁぁぁ!?

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