1-52【説明を求む】



◇説明を求む◇


 リビングにいる全員が同じ顔をしておる。はて、何が起きたのか……?


 そう、この状況に……俺もまったく同じ顔だよ。

 父さんも母さんも、不思議ふしぎな顔で俺を見てる。いやなんで?

 レイン姉さんは、「え?私、結婚するの?」みたいな顔で俺を見てるけど、そうでしょ?


「――ミオ」


「……な、なに?」


 あっれぇぇぇぇぇぇ?なにこの空気。俺はただ、大切な家族をうばわれたくなかったから……レイン姉さんもさ、何か言ってくれよ。


「ねぇミオ、いったい誰が結婚するの?」


「はぇ?だ、だれって……レイン姉さんが、このひとと……」


「え……私とアドルくんが!?」

「え――俺っ!?」


 え!?なんだよその反応!

 俺だけ場違い感ひどくない!?


 硬直する俺の背後から、クラウ姉さんとアイシアが部屋から出てきた。

 よし、何か言って?頼むから。俺を援護えんごしてくれない?


「――やっちゃったね、ミオ。話聞かないから……」


 指を舐めながら、クラウ姉さんが言う。

 ねぇ、その指俺が舐めた指じゃない?ひかえめに言ってもやばいぞその行動。


「や、やっちゃった……って、なにが?」


 全然理解できない。俺のキャパオーバーなんですけど。

 状況にあたふたし始めた俺を見て、母さんが笑いながら言う。


「――あはは、ミオまさか……レインが結婚するって思ってるの?」


 そうでしょ?え、違うの?

 だってあんなに盛り上がってさ、それらしい事をぬかしてたじゃん!!


「ミオ……お前は誰に似て、そんなに勘違かんちがいをするようになったんだ?」


 オヤジ殿だろうよ!あと、元からなんだわ!悪かったね激情型げきじょうがたで!!


「本当にあなたに似たのね、こんなに取り乱しちゃって……」


 俺、取り乱してたか?冷静だったつもりなんだけど……母には分かるのだろうか。


「か、勘違かんちがい、?僕が?……何を?」


 俺は視線を彷徨さまよわせている。

 キョドってんのかもしんないな。


「あのねミオ……」


 おお、レイン姉さんがみずか否定ひていしてくれるのか?


「私、結婚なんてしないよ?」


「――え?」


 じゃあ、あの変な会話はなに?オヤジ殿がさ、家族になるって言ったじゃん。

 後このひと、めちゃくちゃレイン姉さんを好きなオーラ出してたじゃん、昔からさぁ!


「あ……っと、レイン……俺が説明するよ、弟くんには」


 てめぇの義弟おとうとになった覚えはねぇよ!?

 怒りが顔に出てたのか、後ろのクラウ姉さんが俺を抑えてくれたけどさ……その手、さっき舐めてたよね?


「あのな、弟くん」


「――僕はミオです!」


「あ……ああ、すまない、ミオくん。俺は……ここでお世話になるんだよ」


 ほらぁぁぁ、そう言う事でしょぉぉ!?


「だからレイン……いや、お姉さんには感謝をしてるんだよ、これで、寝たきりの親父に薬を買ってあげられるからね」


 ん?寝たきりの親父?薬?


「――レインには、仕事を紹介して貰ったんだ。ここのさ」


 ここ。つまりうちだ。

 仕事ってのは、そうなると……農作業?うちの?

 あ~~~~~、やってんねぇ……やっちまったぁぁ!!

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