1-50【大黒柱だろ!?】



大黒柱だいこくばしらだろ!?◇


 さぁ。抗争こうそうの開始だ。

 あの男と、俺たちスクルーズ家のな!!


 行けっ!オヤジ殿!!


「……よく来てくれたね。アドル君」


 そうだ!よくき……て――はぁ!?開幕歓迎かんげいすんの?なんでだよ!!


「い、いえ……その……手土産てみやげもなく、すみません」


 そうだぞ、挨拶あいさつなら手土産てみやげは持ってこいよ!!

 この村に土産屋みやげやなんてないけどなぁ!!


「ははは、いいのよそんな事を気にしなくても、ねぇあなた?」


「ああ、勿論もちろんだとも、これから――家族・・になるんだからなっ」


「――はあっ!?」


「こらミオ」

「ミオ~!」


 そりゃあ声も出るって!だって家族……家族って言ったぞ!あのオッサン!

 今、言ったよな!?なぁ!?


「いいから静かにして」


「――むぐっ……」


 ク、クラウ姉さんに口をふさがれたぁぁぁぁ!


「あの……今何か……?」


「ははは、気のせいだよ」


 気のせいじゃねぇよ!!オヤジ殿も何でそんな冷静なんだよ。

 レイン姉さんを嫁に出すって事だろ!?怒れよぉぉぉぉ!!


「俺なんかを一員にしていただけて、本当にありがとうございます!」


 誰が一員じゃボケェェェェ!!

 俺はふさがれた口をモガモガとさせて、飛び出していこうとしたが。


「――ミオ。だまらないと口で・・ふさぐよ」


「……」


 ――シュン。


 はい。すみません。

 そうなんだよ……あのおませなクラウ姉さんだったけど、クールになったと思ったら、中身はもっと過激かげきになっちゃって……性的なスキンシップをかわすのに、俺が毎日どれだけ頭を使ってるか。


 ――って、今はそうじゃない。それどころじゃない!


「それよりも、お父様は大丈夫なの?」


 レ、レイン姉さん……お父様って……相手の親をそんな風に呼ぶのか?

 俺はショックで泣きそうになる。これは夢なんだよって誰かに言って欲しかった。

 今だけなら、転生が夢オチでも許せてしまいそうだ。


「ああ、悪いなレイン……心配かけて」


「ううん。いいのよ」


 悪いってなんだよ。これじゃあレイン姉さんがお前にゾッコンみたいじゃないか!

 レイン姉さんも、そんな男は止めておこうぜ……そいつ、昔レイン姉さんを泣かせた男だよな?


 そうだ。この男は、俺がレイン姉さんに連れられて学校に行った日、レイン姉さんをからかった男の一人だ。

 うちの野菜をからかった奴だろ、あの時からレイン姉さんに気があるんじゃと思っていたが……まさかここまで来るとは。


「俺も、本当にここに来れてよかったと思ってる……本当にありがとう!」


「……ぐぅぅぅぅ!」

「ミオ」

「ミオ~」


 男、アドルはレイン姉さんの手を取って、涙ながらに礼を言っている。

 絶対演技だね。俺には分かるんだ。

 つーかオヤジ殿も……もらい泣きしてねーでなんか言えよ!!あんた大黒柱だいこくばしらだろ!?

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