1-49【そんなの抗争開始だよ】



◇そんなの抗争開始だよ◇


 帰宅した。何故なぜかアイシアも一緒だったけど。

 帰ってすぐ、俺はママン……レギン母さんに挨拶あいさつをする。

 レギン・スクルーズ、今年で三十五歳。いや全く見えない。

 七年前から変わってないよ、この人。


「ただいま。母さん……コハク・・・はいい子だった?」


「おかえりミオ……ええ、もう元気で大変よ~」


 俺の母、レギンが抱える女の子。

 名はコハク……コハク・スクルーズだ。


 命名はクラウ姉さんだ。多分、意味は分かんないと思ったんだろうな。

 俺は分かっちゃうんだな、琥珀コハクだろ?


「そっか、コハク……元気でいい子だね~」


「うん!ミオにいちゃん!」


 我が家のいやしだよ……同じ六歳の時のクラウ姉さんと比べてしまうわ。


 さてと、俺も部屋に行って準備をしないとだな。

 なんの?決まってんだろ……レイン姉さんの自称友達をぶっこ……大人しくさせる為のさ。


「あ、ミオ?」


「――え。なに?」


 おっと、考えすぎていた。

 危うく顔に出すところだったぜ、なんでしょうかねレギン母さんよ。


「もうすぐレインお姉ちゃん来るだろうけど、大人しくしてるのよ?」


 はっは~ん。レギン母さんは好意的な訳ね……勿論もちろん分かっているさ、邪魔じゃまはしないよ、邪魔じゃまはね。


「うん。部屋で大人しくしてるよ」


 名目上めいもくじょうはね。俺はいい子だからさ。





 少しして、今度はオヤジ殿が帰って来た。

 あ~あ~……そわそわしちゃって、見てるこっちが不安になるよ。

 ルドルフ・スクルーズ、スクルーズ家の大黒柱だ。

 今年で四十歳、最近は口髭くちひげを生やし始めたけど、全然似合ってねぇよ?


 そして俺は今、クラウ姉さんとアイシアと共に、いまだに三人部屋の俺の部屋で様子見だ。

 ルドルフ父さんが帰って来たって事は、そう時間もかからずにレイン姉さんも来るだろう。ターゲットを連れて……なぁ?


「……来たよ。レインお姉ちゃん」

「どれどれ……」

「わたしも見たいっ!」


 俺たちは重なりながら、ドアの隙間からのぞく。

 上からクラウ姉さん、俺、アイシアだ。何とも得なサンドだな。


「……やっぱりあのひとか」


「だね。情報通り」


 お?もしかしてクラウ姉さんも調べてたのか……?


 リビングでは、食卓にもなるテーブルにつく。

 行儀よく椅子いすを引いて、背筋もよく伸びた金髪の美女。レイン姉さん。

 レイン・スクルーズ、十五歳だ。

 十五とは思えないルックスは母譲りで、信じられないほどふくよかなモノをお持ちだ。

 うん。あれは誰かに渡したくないよな。いくら弟でもさ?


「……」


 俺がにらむあのひとは、レイン姉さんの隣にガチガチで座り、まるで結婚の挨拶あいさつかのように汗をいていた。

 さぁオヤジ殿……抗争の口火は、あんたが切るんだぞ!!

 やってやるんだよぉぉぉぉぉ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る