1-40【まぁそうだよな。落ち着け俺】



◇まぁそうだよな。落ち着け俺◇


 ママンに抱かれて外に出ると、なんと皆いた。

 オヤジ殿も、レインお姉ちゃんもクラウお姉ちゃんもさ、皆いたよ。

 俺は恥ずかしさで、ママンに顔をうずめた。


「あら、恥ずかしいのかしら?」


「……すっごい声だった」


「そうだね~。外まで聞こえたからねぇ」


「男の子だって泣きたい時はあるさ。なぁミオ」


 うるさいな!オヤジ殿の考えとは違ぇよ!

 おら、でんなっ!


 バシッ――!


「……いってっ。ひどいじゃないかミオ~」


 だまれ。だまれぇぇぇぇぇ!!

 俺は腹立って、両手でオヤジ殿の口を開いた。グイッ――とさ。


「いふぁふぁふぁふぁふぁ……ふぉいふぉい、いふぁいふぁお?」


 分かんねぇよ!!つーかよだれ!!


「お父さん、汚い~」

「……」


 ほら見ろ、娘に嫌われろっ!――ってクラウお姉ちゃんの顔!!

 なにその「だから父親っていやなのよね」みたいな感じの顔!六歳児さぁ、さとり過ぎじゃない!?

 

 もうちょっとレインお姉ちゃんみたいにさ、「もう、お父さんったらぁ」みたいな感じにしたげて!?

 自分でオヤジ殿にやっちまったけどもさ、居たたまれねぇよ!!

 え、なに?やっぱりどこの世界でも、オヤジは嫌われる運命なのか!?


「……」


 なんだ?クラウお姉ちゃん、どこを見てる?

 あっちって……昨日の、林の方向じゃないか?


「……ん?」


「あ……」


 目が合って、俺は首をフルフルと横に振って「なんでもないよ」とアピールする。

 クラウお姉ちゃんも「うん」と言った感じに、その場は何事もなかったんだ。





 結果を言うとさ、皆でリュナさんを見送ってたんだとよ。

 俺は別に泣かなくてもよかったんだよ、な~んで泣いたんだろうな?

 いや、マジで恥ずいわ。落ち着いて一歩外に出れば、皆いたって事なんだよ。


 リュナさんは、俺が寝ちまった後に酒を飲んだらしい。

 勿論もちろん、ルドルフとレギンもな。

 その結果、リビングで爆睡ばくすいだとさ。


 つまり、リビングで夫婦と元カノ三人で寝たって事……だろ?

 ベッドで無くても、その場に居なくてよかった。

 子供の体力にありがとう。だ。


 ママンから降りて、俺はレインお姉ちゃんと一緒にいる。

 外では、何か野菜をしていた。皆でな。

 ドライベジタブルってやつだ。今日は天気もいいし、大きめに切った野菜もされればちぢむし、水に戻して食うんだよな、これ。

 保存も利くし、便利だもんな。


 思えば去年もやってた気がするわ。おぶられて見た記憶がある。

 なんで考えおよばなかったんだろうか?不思議ふしぎだね、まったく。

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