1-39【泣きじゃくる】



◇泣きじゃくる◇


 目覚めると、そこは自分の布団だった。

 よ、よかった……もしまた夫婦の寝室で目を覚ましてたら、立ち直れない。

 更には、昨日いたリュナさんだ。


 もし隣で三人が寝てたらどうしようかと、一瞬だけ感じちまったよ。


「ふぁ~……」


 ボロっちい窓から差す光がまぶしい、光を見ると欠伸あくびでない?俺だけ?


 にしても、子供の欠伸あくびは可愛いよな。いやされる。

 まぁ……悲しい事に自分のなんだけどさ。


 俺は起き上がって、周りを見渡す。

 誰もいないな、レインお姉ちゃんもクラウお姉ちゃんも、隣にはいなかった。


 あれ……?なんで?

 俺は急いで扉を開けて、リビングに向かう。

 いない……誰もいない。


 ドクン――


 ドクン――ドクン――


 ドクンドクンドクン――


 あれ……?なんだこの感じ……心臓が痛てぇ。

 心がけそうだ、気持ちがぐらつく。

 なんで誰もいないんだよ、なんでこんなに……家が広く感じるんだ。


「……ど、どこ?」


 なんで俺、こんなに声がふるえてんの?

 もしかして、さびしいのか?

 今までは、起きたら誰かが居てくれた。さびしくなんて無かった。

 でも……今は……独りだ。


「……ぅ……う」


 うそだろ?泣きそうなんだけど。

 これって俺の気持ち?それとも三歳児の心象しんしょうが、俺の心にも影響しちゃってんの!?

 あ~駄目だめだ……決壊する……!


「――うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!わぁぁぁ、わぁぁぁん!!」


 いつの間にかさ、俺はレインお姉ちゃんのぬいぐるみを持ってたよ。

 商人から買った、お姉ちゃんのお気に入りだ。

 それを、ぎゅ――っと抱えて、さびしさをまぎらわすようにさ。


「――ミオ!?」


「――!!……お、お母さぁぁぁぁんっ!!」


 涙でゆがむその姿に、俺は三歳児の全速力で駆けた。

 外からやって来たママン、レギンに突撃して、全力で抱きついた。


「あ~ごめん、ごめんねぇ。よしよし……ほら泣かないの、男の子でしょ?」


 泣きたくて泣いてんじゃないんだけどさ……もう制御できないのよ。

 前世の俺だったら、一人でいた所で何とも思わないし、むしろ安心できただろうな。


 子供の気持ち……もう少し考えてあげて欲しいな。

 そんな風に、身に染みて思ったよ。子供はさ、起きた時自分一人しかいないと、もう誰もいないって思っちまうんだ。

 いつもより静かで、いつもより部屋が広く感じて……みんな消えてしまったってさ。


「うぅぅぅ、え~ん……お母さぁん!」


「はいはい、いますからね……」


 俺を抱っこして、背中をでてくれるレギン。

 一昨日おとといのあのママンは幻想だったんだ……俺のママンは優しくて、あんな乱れた声出さないんだよ。

 うん。分かってる……子供の勝手な理想だよ。

 でも、もう子供の前では見せないでね。頼む……一生のお願いだから。普通にトラウマだから。

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