1-32【これが学校?】



◇これが学校?◇


 八歳児二人の苦肉の策は、俺を一緒に学校へ連れていく事だった。

 だ、大丈夫か?レギンママンあたり、必死になってさがしたりしないか?


「……連れて行くっていっても、お母さんとお父さんに言わないと」


 だよなぁ。ルドルフはともかく、ママンは絶対心配するぞ?

 あ、いや……今はルドルフもちゃんと心配するだろうな。


「じゃあさ、ほら……あそこにいるのは誰でしょう?」


「え?」


 え?誰?普通に散歩さんぽしてるおばあちゃんじゃないの?


「……そっか!おばあちゃ~ん!」


 レインお姉ちゃんも心当たりがあるのか、散歩中のおばあちゃんに声をかける。


「お~お~、レギンじゃないか……」


「もうっ、私はレインだよ!孫と曾孫ひまごの顔間違えないでよ~」


 なるほどね。曾祖母そうそぼだったのか。

 ……。……。……。――は?


「……」


 多分、同じ顔してるよ。今のミオと心の中の俺。

 レギンが孫で、レインが曾孫ひまごだろ?

 つまり俺のひいばあちゃんじゃん!!え?なんで?初顔合わせなんだけど!!

 思い返せば、産まれてから一度もじいちゃんばあちゃんに会ってないな……ルドルフにもレギンにも。両親はいるはずだよな?

 家でもそう言った会話はしてないな、そういえば。


 にしても、こんな近くに親戚いたんだな……普通におどろいたわ。

 近くに住んでたのか……ひいばあちゃん。なんで今まで……ん~。あ、そういうことか?

 人の名前を間違える、一人でウロチョロしている。

 それを考えれば……きっとこのばあちゃん……認知症にんちしょうなんじゃないか?

 でもこの世界……正確にはこの村には呼び方がないんだ、認知症にんちしょうという名前が。


「おばあちゃん、この子……ミオって言うの。曾孫ひまごだよ?」


「……」


 俺はレインお姉ちゃんの後ろに隠れて、ぺこりと挨拶あいさつをする。

 恥ずかしそうに、少し怖がりながら。


「お~そうかい、それで、なんだい?」


 興味きょうみなしっすか?それはそれで悲しいんだが。


「私、今から学校に行くのね。でも、この子を家に連れて行く時間も無くて……だから、連れて行こうと思うんだけど……おばあちゃん、お母さんに伝えてくれる?」


 だ、大丈夫か?このばあちゃん。


「あ~はいはい……レギンにね。わかったよ」


 笑顔で言うけど、どこ見てんだ?

 ほ、本当に大丈夫か?不安なんだが。


「うん!お願いね?……それじゃ行こう、ミラージュちゃん!」


 足早に、レインお姉ちゃんは俺をおんぶして走り出した。

 俺はそんなレインお姉ちゃんの肩越しから、ひいばあちゃんを見ていたけど、やっぱり不安だらけだった。


 ひいばあちゃんがボケてるって、きっとレインお姉ちゃんの中でもあるんだろう。

 本当は、俺を預けるのが手っ取り早いんだ。

 でも、素直にそれをしなかったのは、ひいばあちゃんの現状が、家族間でしっかりと共有されているからだろう。

 俺は知らなかったけどな……ひいばあちゃんがいる事すら、この時初めて知ったんだから。





 着いたよ。学校だってさ。

 意外と早く着いたな、総勢数名の学校――学校?


 ん?学校?これが学校?


「良かった、間に合ったね!」


「そーだね、早くすわろっか」


 せまい教室の中で席に着く二人、俺はレインお姉ちゃんの膝の上にちょこんと乗っている。

 しかし当然……このようなお子様は注目は浴びる訳で、視線は全部俺が独り占めをして、授業が始まるのだった。

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