1-23【レインお姉ちゃんの友達】



◇レインお姉ちゃんの友達◇


 夏になった。誕生日の暴発事件から、一ヶ月ってとこだな。

 俺の一番目の姉、レインお姉ちゃんが……学校に通うことになった。

 レインお姉ちゃんは八歳だ。小学生としたら遅めの入学だろうけど、この村には今まで学校なんか無かったんだよ。

 ちなみに、レインお姉ちゃんをふくめても、生徒はたったの五人だってさ。

 このパターンだと、クラウお姉ちゃんの入学時は四人、俺の時は三人になりそうなんだと。


 レインお姉ちゃんの入学にともなって、スクルーズ家では会議が開かれた。とは言っても、夫婦二人の会話だが。

 入学金を払わなければならないんだとさ。まぁ当然か。

 でもって、実はスクルーズ家、最近金の入りがいい。


 俺が産まれた年に作った、新しい畑があっただろ?その畑が、実は大豊作だったんだ。

 オヤジ殿の元カノ、リュナ・ロクッサさんと共同で管理しているこの大きな畑は、ここ一年で不思議ふしぎなほどにみのったんだ。

 俺は一度しか見に行った事はないけど、おどろくほど広かったな。


 そんでもって、初めて会ったオヤジ殿の元カノ……リュナさんだけど。

 ルドルフとは本当にもうなんでもなくて、普通に共同経営者って感じだった。

 俺の事も可愛がってくれてさ、あと……リュナさんも結婚してて、子供もいるんだってさ。

 俺と同い年の女の子で。まだ会えてはいないけど、多分可愛いんじゃね?

 でもさ、それだとリュナさんは産後すぐ畑仕事とかしてたって事だろう?行動的だよな。


 ――っと、話がれちまったな。すまん。

 その畑でれる野菜。多くは大根や人参に似たもの、根菜こんさいだな。

 それがバカほど売れたんだ。


 月に一度、隣町……って言っても相当遠いんだが、その町から商人が来る。

 その商人が【スクルーズロクッサ畑】の野菜を、高値で買ってくれたんだ。

 だから、レインお姉ちゃんは何のうれいもなく学校へ行ける。

 何を学ぶかはまったく知らないが、とにかくこの過疎化かそかした村に、学舎がくしゃが建つのだ。





 そして今日。レインお姉ちゃんが学校へ行く日が来た。

 今は、一緒に登校する友達を待っている所だ。


 お。レインお姉ちゃん、緊張してるな……お行儀よく座ってはいるが、もじもじしている。

 うんうん。おしっこはしておいた方がいいぞ。

 俺がそんな親切な考えをしていると、レインお姉ちゃんと目が合う。


「ねぇミオ、お姉ちゃんね……学校に行くんだよ~」


 にっこり笑顔で、俺に笑みを向けるレインお姉ちゃん。


「……うん。なんでぇ?」


 笑うなよ。三歳児なんだから、何に対しても「なんで?」って言うだろ?

 俺も必死に三歳児やってんの!ロールプレイなんだよ!

 何にもできない転生生活なんだから、せめてロールプレイくらいさせろ!


「う~んっとね……お勉強をするんだよ。みんなと一緒に」


「ふ~ん、なんでぇ?」


「えへへ……えっと~」


 ごめんレインお姉ちゃん。

 困らせたいわけじゃないんだ……三歳児だから!

 と、そんな俺の葛藤かっとうを助ける様に、レインお姉ちゃんの友達とやらがやって来てくれた。ナイスタイミングだ!


「ごめんくださ~い!レインちゃんいますか~?」


 何とも活発な声音こわねだ、さぞかし元気な子なのだろう。


「――あ!ミラージュちゃん!!」


 レインお姉ちゃんの顔も、パァ――っと明るくなった。

 そうだよな、笑顔の方が可愛いよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る