1-17【誕生日は祝うものだと思ってた】



◇誕生日は祝うものだと思ってた◇


 え~っと……何の話してたっけ?

 ああそうだ、俺の誕生日じゃん。

 転生して、新しい人生三回目の誕生日だ。


 スゲーよな。まさか、三十歳でここまで大々的に誕生日を祝われるなんてさ。

 ってよく考えたら、精神年齢はもう三十三なのか?……今の身体は三歳だし、そういうことか。

 早いもんだよ。三年。転生して三年だ……なーんにもしてねぇじゃん俺!!


 せっかくの異世界転生も、何もせずただ過ごしてたら意味ないだろ?

 でもさ、何も出来ねーのが現状げんじょうな訳よ!だって、この前まで赤さんだったんだぜ。

 何かをしようにも、誰かが常に近くに居るんだよ。

 姉ちゃんしかり、オヤジしかりさ……


 特にオヤジ。ルドルフは、あの一件があってから過保護になった。

 俺が食っちまった葉巻事件。それで一旦家族崩壊しそうになったんだが、その事件を乗り越えた先にあるのが、今のルドルフの過保護だ。

 以前は家事や育児はノータッチだったルドルフも、積極的にやってくれるようになって……おどろくなよ?


 そのおかげで苦労が減ったレギン、俺のママンは……めちゃめちゃ美人さんになったんだ。

 もともと美人ではあったが、甲斐性かいしょうのない旦那とクソったれな間男のせいで心身がやばかったんだが、ここ最近はもう別の意味でやばい。

 セクシー女優も負けなしの色気を放ってんだもん……もしかしたら、近いうちに家族が増えるかもしれん……


「……ねぇ」


 いやしかし……普通の三歳って何してたんだろうな。

 いろいろ考えながら過ごしてるけど、三歳児の言動とか俺知らないし。

 いい子になるって決めたはいいもののさ、この村……マジで何もないんだよ。


「ねぇってば、ミオ」


 ん?あ、やべ……クラウ姉ちゃんが呼んでた。


「……ん?」


 可愛らしく、小首をかしげて言う。

 うん。前世の俺がやってたら軽く死ねるな……もう死んでるけど。


「もう……ほら、蠟燭ろうそくふーってして」


「うん!」


 次女のクラウ。六歳児にしては、かなり知識が豊富ほうふかしこい子だ。

 いったいどこで覚えて来てんだか。


 俺は思いっ切り息を吸いこんで、野菜のケーキにブッ刺さってる一本の蠟燭ろうそく目掛けて息を吹きかける。

 三本じゃないのかって?言うなよ……貧乏なんだ。


「ふっーーーーー!」


 フッ――と、何とも簡単に消えた小さな蠟燭ろうそく

 パチパチパチパチ――と、家族が改めて「おめでとう!!」と言ってくれている。


「えへへ……ありがとう!」


 満面の笑みで、俺は家族に言う。

 本心だよ。本当にありがたいって思ってるさ。

 誕生日なんて、俺は盛大に祝われたことなんて無いからな。誕生日は祝うもの。

 「おめでとう」と、メールやラインで言葉をもらっても、こうして囲まれて祝われた事なんて、なかったんだ。

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