澪から始まる異世界転生譚・少年編～手違いで死んだ俺、女神に最強の能力と武器を貰うも、スタート地点がド田舎だったのでスローライフを目指す事にした～

１－１４【ほらな、やっぱ家族は一緒がいいよ】

◇ほらな、やっぱ家族は一緒がいいよ◇

　父親、ルドルフが帰って来た。

　居た堪（たま）れなさそうな顔をして、両手を娘二人の手で繋（つな）がれている。

「――あ、あなた……？」

　ルドルフは、レインとクラウに促（うなが）される。

「ほら、お父さんっ」

「……んっ！」

　クラウがルドルフの足を踏んだ。

　おい三歳児……やる事が三歳じゃないぞ。

「いっ！……あ、ああ……分かってる、分かってるよ二人共。や、やぁレギン……その、ただいま。すまない……何日も、家を空けて」

　もしかして、レインとクラウが迎えに行ったのか？

　風の噂（うわさ）では、リュナって元カノの所にいるって話だったよな？

　あぁそうか……その時点で、俺も同じだ。

　聞こえてきた噂（うわさ）を信じてしまって、ルドルフがどこで何をしてるかなんて、本当は知らなかったんだからな。

「ねぇ、今まで……何をしていたの？」

　ひと月だぞ。その間何してたんだよオヤジ。

　俺の疑問（ぎもん）と妻の問いに、ルドルフは。

「……新しく出来た畑の近くに小屋を建てて、そこで寝泊まりをしてたよ、真剣に、農作業をしていた。でも、本当は帰るつもりだったんだ」

　――マジで……？ひと月も？

「――それで？家族が恋しくなって……やっと戻って来たの？」

「……うっ……ごめん。身勝手で、最低だ」

　めっちゃ刺すじゃんママンも。

　いや、でも多分違うよ。それをさ、レギンも分かってて聞いたんだろ？

　ルドルフの両隣にいる女の子二人を見れば、答えは自（おの）ずとわかる。

　レインとクラウの二人が、ルドルフを迎えに行ったんだ。

　心無い噂（うわさ）と、クソったれなイケメンのせいでやつれていく母を、娘二人も見ていられなかったんだ。

　心から思うよ、俺の姉ちゃん二人は……めっちゃいい子だ。尊敬（そんけい）するよ。

「ふふ……分かってるわ。その子たちに感謝ね……お互いに」

「……あっ、ああ！ああっ！！」

　うんうんと頷（うなず）くオヤジ殿。

　涙ながらに、二人の姉を抱きしめた。

「ごめんな二人共、お父さんが全部間違ってたっ！レギンも、本当にすまない……だらしのない夫で、申し訳なかった！」

「痛いよ～、お父さんっ」

「……パパ、ひげが痛い。キモイ」

「まったく、しょうのない人ね……」

　ああ、感動的だ。家族愛とかさ、昔から弱いんだよ。

　テレビでいっつも泣いちゃうんだよな。

「……で、でもさ、何か」

　ん？どうしたんだよオヤジ殿。そんな鼻をクンカクンカさせちゃってさ。

　お姉ちゃん二人も、顔を顰（しか）めてんじゃないよ、感動的な場面でしょうが！

「あ！あらあら……ミオのオムツだったわ。換（か）えないとね」

　――あ。俺じゃん。俺の、世紀に一度の――ふんっ！！のせいじゃん。

　こ、これは恥ずかしい。でも、赤さんは気にしないんだぞ。

　そう、気にしないのだ。たとえ、心の中で恥ずか死んでいたとしても。

「――ミオのオムツ、僕が換（か）えるよ。この子のお陰でもあるからね……」

　お、そうだぞオヤジ殿。自分から育児に積極的なのは、いい男の条件だ。

　まぁでも、換（か）えてくれるのならママンがいい。もう慣れたしな。

「ばぶ～、ばうあ～」

「ふふ、ミオは嫌だってさ」

　お？ママンには伝（つた）わったのか？

　オヤジ殿。「そんな～」じゃないのよ、誰が好き好んでオヤジに股を開くねん。

　自意識の薄（うす）い赤ちゃんならまだしも、俺は赤さんだからな。

　だからさ、次の機会でいいよ。また次にしてくれ……そうすれば、家族は一緒に居られるんだからさ。