1-2【辛い、辛いよ赤ちゃん】



◇辛い、辛いよ赤ちゃん◇


 産まれてからどれくらいっただろう?

 まだ数日か?それとも数十日?いっそ一年とか……早くってくれよ頼むからっ!!


「――おぎゃあ、おぎゃあぁぁぁぁ!」


「わ、わー!お母さんっ!ミオが泣いてるよー」


 泣くわめく俺を、長女のレインがあやしてくれるが、まっっったく嬉しくない。

 何が面白くて女児の変顔を見にゃならんのだ。


「あらあら、ミオは泣き虫さんね……やっぱりお父さんに似たのかしらねぇ~」


 母親のレギンが俺を抱き、よしよしと揺すってくれる。

 くそぅ……悔しいが、母に抱かれる安堵感あんどかんと言ったらこの上ない!


 前世の母親に同じことをされたら号泣する自信があるが、なんということでしょう。今世の母親レギンは……ドチャクソ美人さんだ。

 おまけに父親のルドルフまで結構なイケメンときたもんだ。これで俺が成長して、将来ブ男だったら、もう一度転生させろと言いたくなっちまう。


「おぎゃああああ!」


「あらあら、おっぱいかしらね?」


 ――!!や、やめろ……やめてくれぇぇぇ!!


 それ・・だけはもう嫌だ!!

 その羞恥しゅうちだけはもう勘弁かんべんしてほしいんだ!

 なんで大人の意識をたもったまま、母親の乳房ちぶさに吸いつかにゃならんのだ!!

 俺にそんな高度なプレイを強要しないで――はむっ!!


「……ちゅぱ、ちゅぱ……」


「ほら泣き止んだ……」


 くそがよぉぉぉぉ!!本能にはあらがえねぇぇぇぇ!!

 赤ん坊の当然の権利けんりを、俺はいやいや堪能たんのうする。

 堪能たんのうさせられている。


「ばぶ、ばぶぅ。きゃっきゃ!」


「お腹いっぱいになったらこの笑顔よ?本当にパパにそっくりね」


 それを言われるとさぁ、何だか夫婦のプレイがそういう事してんじゃねーの?ってかんぐっちゃうからやめてくれ!!居たたまれないんだよぉ!!


「お父さんおかしい~」

「だねぇ~、おっぱい飲むの?」


 ほら、お姉ちゃん二人もうたがってんじゃん!!

 少しは恥ずかしがれよオヤジさんよぉ!!


 ――うっ!!の、飲んだから……腹が。

 くっ、クソ……クソ……くそがよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 文字通り、オムツに用を足した俺は心の中でむせび泣く。

 そうだ、これからオムツをえられるのだ。


「あ、くちゃいくちゃいだ~」


「あらホント、飲んだらすぐなんだから……オムツも替えを買わないとね」


 母親レギンは俺を寝かせると、足をパッカーンと布のオムツを脱がせる。

 くっ、恥ずかしすぎる……全開で見られてる。

 こんな幼気いたいけな女児二人に、ガン見されてる……おいオヤジ!せめてお前は見るな!!


「ほらみてみて、小っちゃいおち○ちんっ」


 ぎゃああああああああああ!!


 何をあろうことか、次女のクラウが俺の息子を引っ張りやがる!!

 やめ、やめ……前世でも触られたこと無いのに!!

 やめ……やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る