第30話 見透かされた隠し事

 しまった。紗彩も何か悩み事してたのか。それで僕が悩み事があると分かったのか。出来れば、打ち明けたい。でも、打ち明けることができない。いくつかは、

打ち明けることができる。僕の悩みは、和希、家のこと、そして、この恋愛。

和希問題と家のことなら打ち明けることができる。でも、恋愛に関しては、絶対に

打ち明けることができない。目の前に立っている子が関係しているのだから。

「ねえ、あるの?ないの?」

「あるにはあるんだけどね・・・。でも、紗彩には言えないよ・・・」

「そうなの・・・。って、さっき『紗彩ちゃん』じゃなくって、『紗彩』って

言った?嬉しい!!それじゃ、私は、『風馬』って言うね!!」

「あ、はい・・・」

ちょっと戸惑ったけど、まあナイス。このことを、すぐに忘れてくれたのだから。

「それじゃあ、そろそろ行く。じゃあな!」

「じゃあなぁ~!バイバイ風馬~!」

急場を脱出した。まずは、一旦家に帰ろう。そのはずが・・・。


「どうした風馬、まだ帰ってないの?」

「わわっ?!」

ビックリした。大輔でよかった。直樹だと思った・・・。

「ごめん。直樹だと思ってさ」

「なんでだ?」

「ええ?いや、なんかちょっと」

「絶対何かあるな?」

「ないって!!信じろよ!」

強がって胸をたたく。でも、本心はすごく弱かった。とんでもなくまずい。

「そんなに強がってどうすんの?知ってるんだよ?」

「ほんとに知ってるの?何を?」

「何か隠してるってことを。さっき『ほんとに』って言ったのも怪しい。直樹に関係

するんでしょ?何だ、恋のことかな?」

大輔の顔がどんどん近づいてくる。

「ほんとに何にも隠してなんか・・・ないよ・・・・信じてよ」

「ほら、だんだん失速してきた」

ああ、もうダメだ。さすがは、親友。

「ああ、分かったよ。明かす。さすがは親友大輔。完全に見透かされてたよ。

紗彩にも見透かされてたけど」

「紗彩にも・・・?」

ありりりりり。また何か考えてる。

「正直に答えろ。紗彩ちゃんと付き合ってるだろ?『紗彩』って呼び捨てにしたし、

『紗彩にも見透かされたけど』って言ったってことは、会ったんだろ。

紗彩ちゃんにも見透かされたってことは、それほどの付き合いがあるってこと。

つまり、紗彩と付き合っているという式が成立する」

「本当に、親友なんだな。僕たち。完全にバレてたよ。うん、その通りだ。でも、

実は、付き合ってるのは紗彩だけじゃない」

「誰だ?」

「荻野優奈だよ。優奈にも恋をしていて。でも、それで多分フラれた。まあ、それで

今は紗彩一筋になったわけなんだけど、本当に困ったよ」

「直樹だろ?」

「そう。直樹も紗彩が好きだからなんだ。それで、すごく迷ってる。赤い糸は、

切れるか張るか。なあ大輔、どうすればいいと思う?」

「それじゃあ――」

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