第28話 紗彩と

 耳元でした、この愛らしい声の主は、その当の紗彩!!

「やあ、どうした?」

「『どうした?』って、風馬君が直樹君と大輔君と話してたから、その話が

終わったら行こうと思って。でも、新聞部員から呼ばれてね。それで、話して戻って

きたら、風馬君がここに棒立ちしてたの。なんで、こんなとこでボーっとしてたの」

「そそそそ、それはね・・・・・・・」

さっき、優奈への浮気が発覚した相手。そして、直樹も恋をしているという相手。

そんな紗彩にいきなり話しかけられると・・・。

「ねえ、優奈が好きって本当?」

「本当ではあるよ。でも、どっちも好き」

「あのね、優奈が風馬君の浮気にキレて帰っちゃったんだよ」

「ええっ?そうなの・・・」

あ~あ、やっぱりフラれた~。でも、これはいいことでもあるかもしれない。二股の恋が終わり、紗彩1人だけに、ターゲットを絞ってアタックできるのだから。でも

その先には、直樹というライバルであってほしくないライバルが・・・。あ~、

どうしよう。とっても迷っている。マジでどうしよう。紗彩をフッて、優奈に

アタックするとか?でも、浮気が分かっても、僕に寄ってくれる紗彩にはやっぱり

無理だ・・・。やっぱりどちらかを決めないとダメなのかな?

「も~、また風馬君ボーっとしてる~。何で最近ずっとボーっとしてるの?」

「いや、最近考え事が多くて。友達が麻薬を飲んでたとかさ」

「ええ?!もしかして、山内和希君のこと?!」

「そうなんだ。それで、僕と直樹と大輔が奔走してたわけなんだ」

うん?直樹と大輔?そうだ!今、直樹について聞いてみよう。

「ねえねえ、上橋直樹って子知ってる?」

「当然よ。だってあの子すごい陽キャでいつもうるさいんだも~ん」

直樹は自身が目立たないと言ってたが、逆に目立ちすぎているらしい。まあ、直樹は

確かに陽キャだから、目立つことは当然だろう。でもそんなにうるさい?

「どんな子だと思う?どう思ってる?」

「う~ん、いつも陽気でうるさくって、運動も勉強も一応できそうかな。あと、男前

ではあるけど、イケメンじゃないのがね・・・」

「ふ~ん」

ということは、結構いいイメージで思われているということか。うるさいのを

改善し、ちょっとイメチェンしたら、自然に紗彩は僕ではなく直樹へ向かってくれる

かも?そして、そうすると、優奈は、ライバルがいなくなり、戻ってくるかも。

案外いいアイデアじゃん?早速直樹に報告しよ・・・と思ってたら、

「風馬君って、海賊軍団に入ってるの?」

「え、うんそうだ。直樹と大輔もだよ」

「そうなんだ・・・」

はっ!これがバレると、直樹も僕もフラれてしまうかもしれない。ヤンキー相手の

恋愛なのだから。どうしよう?どうしよう?どうしよう?ああ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る