第2章 風馬の恋愛事情

第21話 晴れた霧

 麻薬とは、ものすごく恐ろしいものだった。もしひどければ、和希や益男が

死んでしまっていたかもしれないのだ。しかも、益男と仲がいい生徒の中には、薬を

もらっていた人もいるかも知れない。そんな人がまだ学園にいたら・・・。

とても恐ろしい。

「これで、麻薬のお話はおしまいです。それでは本題。和希さんの麻薬使用理由に

ついてです」

いよいよか。一番恐ろしい話だ。


 今からだ。いよいよ始まる。

「それでは、始めたいと思います。話を聞く心の準備はできましたか?」

「・・・・・」

「出来ましたか?」

「はい、今できました。風馬と大輔もです」

「分かりました。それでは今から話を始めたいと思います」

ゴクン 今から和希の心の中の霧が晴れてくる。

「まず、和希さんは、生徒副会長だったってこと、知ってますよね?」

「はい、もちろんです」

「それで、学園のためにと、様々な改革を行ったようです。それで、いいことも

たくさんあったのですが、急な改革に学園内から反発が起こり、それがストレスと

なった。それでも、和希さんは、学園のために学園改革を行ったんですね。

そしてそして、仲の良かった風馬君や直樹君、大輔君と対立してしまい、ほぼ独りに

なったわけなんです。それを紛らわすために、覚醒剤を飲み始めたんですね。

でも、それを飲めない学園内では、また嫌だったので、また薬を飲んだ。そして、実

は、学園の中でも、こっそり薬を飲んでいたようなんです。那賀さんが薬卒業をし、

和希さんにも、『やめなよ』って声をかけたんです」

なるほど。でも、ここまではまあまあ分かった。でも、この後が気になる。

「それでも、那賀さんが勧めたのに、なんで那賀さんが『やめなよ』って言ってきた

のかがよくわからなかったようなんですね」

勧められた人に、『やめなよ』って言われると、確かによくわからなくなる。それは

分かる。和希は、益男を恨んだのだろうか?でも、そしたらあの日、和希が益男に

協力を求めた理由が分からない。

「さらに、大輔さんがよく勉強できるので、それに嫉妬したようなんですね」

「え、太田さん、僕に嫉妬したんですか?!成績もあんま良くないのに?!」

「はい。まあ、それで嫉妬して、海賊軍団とかいう、メンバーに生徒副会長の座を

追われ、信頼していた、教頭や理事長にも裏切られ、さらに、その海賊軍団の改革が

好かれる。それが、気に入らずに嫌で悔しかったらしいんですよね」

海賊軍団のことは、太田さんも知っているようだ。それが和希は、悔しかったのだ。

「そして、最後は風馬君や、大輔君、直樹君を恨んだんですね。この3人は、生徒会

の仕事もうまくこなし、自分より高い立場にあった。ほかにも、何とも言えない

嫌味があって、3人さまを恨んでしまったわけです。そのおかげで、麻薬の使用頻度

が多くなり、最終的に深川嶽への家出。そして、少年院に入ることになったんです」

知らなかった。親友が自分たちにこれほど恨みを持っていたなんて。和希にかかった

深い霧は、このような嫌な感じに、晴れていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る