第18話 少年院へ行く前に

 風馬は、近くの少年院へ急いだ。近くと言っても、かなり遠い道のりだ。

それでも、和希に真相を聞くために行かなければならない。

(あ、遠くへ行くなら、自転車で行く方が早いんじゃないか?)

というわけで、一度自宅へ帰った。それが、まずかった。


 風馬は、自宅まで戻ってきた。父はいないはずだ。

「ただいまー。自転車で遊びに行くねー」

「風馬、おかえり。ちょっと待って」

「・・・?」

「そうそう、これを見せなければならなかったもんね・・・!」

「こ、これは・・・!」

「そう、学園からのお便りよ。鞄に入っていたから、ちょっと一緒に見ようと

思って。何が入っているのでしょうね?」

何か嫌な予感がする。そう、とてもまずそうな何かが。

「ただいま~。おや、風馬。どうしたんだ?」

「お父さんお帰り~。お母さん、何してるの?」

え?父さんは、今会社じゃなかったの?しかも、妹まで来るなんて。変なことに

なるに決まっている。

「お父さん今日は速かったわね」

「ああ、ちょっと俺がかなり疲れていたから、後輩が代わってくれるって言って。

それで、早く帰れたんだ」

「そうそう、今から学園からのお便りを見ようと思ってね~」

「ほう、そうか。何が入ってるんだろう。ちゃんと勉強しないと見たいな内容か?」

「咲楽も気になる~」

咲楽さくらとは、僕の妹のこと。父は、幸弘、母は、雅子という。

「これなんだろう?」

「なんでしょうね?」

「はっ!もしや・・・」

「どうしたの?何か知っているのかな―—?」

「いや、そういうわけではないけど?」

そういえば、生徒会が海賊軍団メンバーの親に向けて、便りを出すといった。家族

は僕がヤンキーになったことをまだ知らない。つまり、この中身を見れば、僕が

ヤンキーだということが一発でバレてしまうのだ。そんなことになったら、地獄の

3者面談。そうなったら、僕は・・・直樹は・・・大輔は・・・?

「あの、ちょっとトイレ行ってくるね。あと、先に読みたいの。いい?」

咲楽が便りをとった。そして、トイレへ。最初で最後のチャンスだ――!

ある程度離れると、風馬は、咲楽から、便りを奪取した。そして、裏口から出て

いった。

「あ、風馬、どこ行くの?」

「ああ、友達が『風馬、早くしろよ!』ってLINE送ってきたから、先行くね」

「分かったわ。いってらっしゃい」


 風馬は、この危機的状況を乗り越えると、自転車で、少年院へ向かった。

すると、交差点で、2方向から、自転車が――!

「うわーっ!!」

3人ともがビックリして、急ブレーキをかけると・・・。

「あ、大輔と直樹じゃないか!!」

「なんでいるの?!」

「どこ行くんだよぉ?!」

そこには、直樹と大輔がいた。

「僕は、和希に会いに、少年院に行くんだけど」

「『僕もだよ』」

「そうなんだ~」

というわけで、直樹と大輔も加わり、少年院へ、自転車をこいでいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る