7日目

ついに北海道での最終日を迎えた。

名残惜しいがやりたかったことは全てこなしたので悔いはない。

道北方面に行っていないがあちらでやりたいことも特にない。

強いて言えば廃線跡を巡りたいが、それは車かバイクで来た時でなければとても無理だ。

そもそも昨日からの雨で留萌本線と宗谷本線は昨日今日と運休を決めている。

あまりに脆い。

最後のホテルの朝食を食べひとまずフェリーの切符を買いに行く。

思えば一つのホテルに何連泊もするのは初めてだった。

また札幌で泊まることがあったらまたここにしようと思う。

フェリーの切符を買う時に学割の証明を持ってきていないことを思い出した。

2割引は結構大きいが、ことここに至っては仕方ない。

2千円程度もはや誤差ということで割り切ることにした。

予約センターまでの道中に有名な時計台があった。

本当にこれのことなのかと思ったが地図を見ても間違いない。

さすが日本3大がっかりと言われるだけのことはある。

雨は降っていないが今朝までの雨で路面が濡れている。

靴底に穴が空いていたようで、左足のつま先の方が濡れてきた。


札幌駅に着いたが特にやることがない。

小樽のフェリー乗り場に16時までに行けば良いから余裕を見て1時間前に行くとしてもまだ5時間ある。

あまり遠くに行きすぎると帰って来られなくなるし、手頃なところということで札沼線に乗ることにした。

区間廃線直前の去年の3月に乗ったが、その後1ヶ月も前倒しでいきなり廃線となったので好判断だったと思う。

あの時は廃線前だというのにかなり空いていたし、石狩月形のスタフの受け渡しの様子を見る人も他にいないという不思議な状況だった。

通勤通学の時間からずれているからか6両編成の列車はかなり空いていた。

札幌を出て函館本線と並走し桑園から右へ曲がって分かれていく。

高架の周りには家が所狭しと並んでいる。

これは需要があるわけだ。

各駅で満遍なく降りていく。

そんな光景があいの里公園あたりまで続いた。

石狩川を越えると途端に両側が畑ばかりになる。

橋を渡ってすぐに警笛が聞こえた。

左側で工事をしている。

これが今度できるというロイズのチョコレート工場利用者のための駅だ。

道内の駅が次々と消えていく中で新駅設置とは希望に満ち溢れていて喜ばしい限りである。

終端の北海道医療大学前に着いた。

名前の通り完全に通学だけを考えているようで、改札機は全てICカード専用となっていた。

これでは外に出られないと思ったが、壁の注意書きに切符をお持ちの方はそのままお通りくださいと書いてある。

改札機を見ればなるほど扉がついていなかった。

帰りは最後尾に乗ったが、車掌の笛が口で吹くのではなくボタンを押して鳴らす機会になっているのに気づいた。

時代の流れを感じる。

八軒を過ぎたところで左手に競馬場の芝が見える。

そういえば馬に会いに行くのもありだったなと今更ながらに思った。


札幌に戻るとちょうど昼時だった。

北海道最後の食事は何にしようかと考えたが決まらないので最終手段として二郎にした。

前回来た時に次は麺を硬めにしようと思っていたのに忘れた。

実に微妙な時間となったが、ここからさらにどこかへ行くというのは無謀なので少し早いが小樽へ向かうことにした。

またエアポートで行ってもいいが、どうせ時間があるのだから鈍行で行く。

これがまた思ったよりも混んでいた。

3両編成のロングシートが満席になって立っている人もかなりいる。

満員と言ってもいい。

まさかこの時間の鈍行がこんなに混むとは思わなかった。

琴似でそれなりに降りていくが、まだ立っている人も多い。

手稲あたりからぱらぱらと降りて行き、星置あたりでかなり座席に余裕ができた。

海沿いを進んでいくが、少し波が出ている。

また船酔いは勘弁してくれと思う。

倒壊した掘建小屋が物悲しい。

小樽築港で降りる。

南小樽で降りても良いが、今はなき貨物ヤードの跡を感じながら歩こうと思った。

現貨物駅を左に見ながら歩く。

昔はこの道も右の大きな商業施設もそのさらに向こうの海の際まで線路があったというのだから凄まじい。

途中北海道最終日にして初めてセイコーマートに寄った。

コンビニスイーツが他の店に比べて安い気がしてつい買った。

フェリーターミナルへの道を歩いていると、バイクが次々に追い抜いていく。

少し羨ましい。


フェリーターミナルで1時間ほど待つ。

トラックと乗用車、バイクが先に乗船し、最後に徒歩客が乗り込む。

ほぼ個室のような部屋に入る。

扉の下にだけ公衆トイレの個室みたいな隙間が空いている。

なぜ普通の扉にしないのだろう。

何か許可の関係でもあるのか。

部屋にはベッドと机椅子そしてテレビがあった。

机に小さな扉がついていて物入れかと開けてみると救命胴衣が入っていた。

荷物を置いてデッキに出る。

下を見るとトラックや車用の渡板が収納されていく。

係留ロープが外されて巻き上げられると、全体が自然と岸壁から少し離れ、次の瞬間海面がボコボコと湧き上がり始めた。

真横に移動しているのはどうやっているのかはわからないが、摩周丸を見学した時に真横にもスクリューがあると書いてあったので同じものがついているのかもしれない。

湾を出てしばらくするまで外を眺めていたが、流石に飽きたので部屋に戻る。

今日は低気圧の影響で波があり船体が揺れることがあるとアナウンスがあった。

私が船に乗ると海が荒れるジンクスがあるらしい。

前回太平洋フェリーに乗った時もかなり揺れて強かに酔った。

今回もまた座ってテレビを見ていると気分が悪くなってきた。

ちょうど少し眠くなってきたので眠気に任せて寝てしまうことにした。

時間は19時ごろであった。

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北海道旅行記 @mukiryokushounen

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