第7話 東公先生 国の形を語る その2

丈夫これに答えていわく。

水に象る。

国、天地の異変により常に力を変じ、民臣の離合により常にその意を変ず。

隣国弱ければこれを討ち強ければこれに従う。

国の常なる形無し。されど内外に因りて形を選ぶはまさに水なるべしと。


東公先生さらに一銭投げ入れ丈夫に問う。

また聞く。民何に象るかと。


丈夫これに答えていわく。

民もまた水に象る。

民もまた天地の異変により常にその拠(よりどころ)を変じ、一族友敵の話談により常にその意を変ず。

弱者あればこれを侮り強者あればこれに従う。

ゆえに民もまた常なる形無し。されど内外に因りて形を選ぶはまさに水なるべしと。


東公先生これを聞きていわく。

東公今二椀を持つ。一方に水を入れこれを国とす。また一方に水を入れこれを民とす。

民は国の内に住まうがゆえに、民の水を国の椀に注ぐ。

今、椀の水半ばあふれて椀中と地上にそれぞれ民国混じれる水あり。水の形またそれぞれ異なる。

いずれの民国の形の正しかるべきかと。


丈夫これに答えずして東公先生に問う。

なれば、汝は国と民とを何に象るかと。




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